セブン銀行の株価はなぜ安いの?
今後の株価はどうなるの?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- セブン銀行は、キャッシュレス化によるATM離れへの懸念により株価が安い
- 配当の高さは魅力だが、ATM事業への依存度が高い点が弱み
- セブン銀行の今後の株価の行方は、事業の多角化がカギ
セブン銀行は、ATMプラットフォーム事業を主軸とする企業で、セブン-イレブンで有名な「セブン&アイ・ホールディングス」傘下の銀行です。
セブン銀行の株価は安く買いやすいため、購入を検討している方も多いでしょう。
そこで今回は、セブン銀行の株価が安いと言われる理由や、セブン銀行の今後の事業の見通し・将来性について分かりやすく解説していきます。
執筆:かぶリッジ編集部
かぶリッジは、20年以上にわたり投資家向けサービスを提供する株式会社インベストメントブリッジが運営しています。日本株投資や米国株投資を実践する編集部メンバーや、現役の証券アナリスト、元証券会社勤務の社員等で運営しています。
セブン銀行の株価はなぜ安い?理由を3つ解説
💡このパートの要約
セブン銀行の株価が安い理由は…
- キャッシュレス化によるATM離れの懸念
- 海外事業が不振
- ATMの入れ替えによる高いコストが利益を圧迫
まず、セブン銀行の株価推移を見てみましょう。
2012年から2024年までのチャートですが、2015年に最高値を更新して以降、長期的に下落が続いていることが分かります。
セブン銀行の株価で下落が続き、安くなっているのはなぜだろう?
ここからは、セブン銀行の株価が下落基調で、安くなっている理由を3つご紹介します。
キャッシュレス化によるATM離れの懸念
セブン銀行の株価が下落している原因の一つとして、キャッシュレス化の推進があります。
経済産業省は、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にするという目標を掲げており、その割合は以下の図のように堅調に推移している状況です。
このようにキャッシュレス化が進み、ATMの利用者数が減ってしまうことで、セブン銀行の業績に影響が出る可能性が不安視されています。
特にセブン銀行は、国内ATM事業が事業全体の51%を占めているため、この影響は大きいでしょう。
今後もキャッシュレス化は進んでいくから、不安だね…
海外事業が不振
セブン銀行の海外事業が不振な点も、株価に影響を与えています。
米国・インドネシア・フィリピンにおいてATMの設置を行い海外展開をしていますが、米国やインドネシアでは利用件数が伸びておらず、厳しい状況です。
インドネシアではATMの設置台数は増えているのに、1台あたりの平均利用件数は減少しているよね…
一方で、フィリピンではATMの設置台数・利用件数ともに増加しており、また米国も7月から月次で黒字化したため、今後の成長が注目されます。
ATMの入れ替えによるコスト高
セブン銀行では、2019年から新機能を追加するためにATMの入れ替えを進めており、このコストが利益を圧迫しています。
同行の2024年3月期の決算説明資料によると、2025年3月末までにATMの全台の入れ替えが完了する予定で、この影響はまだ続くでしょう。
実際にATMの入れ替えは減価償却費として計上されており、2020年3月期からの減価償却費の推移は以下の表の通りです。
会計年度 | 減価償却費 |
---|---|
2020年3月期 | 136億円 |
2021年3月期 | 130億円 |
2022年3月期 | 149億円 |
2023年3月期 | 168億円 |
2024年3月期 | 186億円 |
2025年3月期(計画) | 240億円 |
同行決算説明資料より
当期純利益の319億円と比較しても、かなり大きな金額だね…
セブン銀行の事業内容・業績
💡このパートの要約
- セブン銀行は、ATMプラットフォーム事業を主軸として4つの事業を展開
- 「セブン・カードサービス」の連結子会社化により、増収・増益
- 中期経営計画の財務目標を引き上げた
ここでは、セブン銀行の事業内容や業績について詳しく見ていきます。
事業内容
セブン銀行では、以下の4つの事業を展開しています。
ATMプラットフォーム事業
セブン銀行では、中核事業としてATMプラットフォーム事業を展開しています。
セブン-イレブンなどでセブン銀行のATMを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
以下の図からもわかる通り、国内のATM設置台数は年々増加しています。
また、2019年から設置が進む新型ATMの強みを活かし、金融機関や行政・事業会社などと連携して、新しい価値創造に取り組んでいます。
リテール事業
リテール事業では、預金やローン・海外送金など個人向けの便利なサービスを提供しています。
特に「セブン&アイグループ」と連携できるという強みを活かし、ユニークな商品性を追求している点が特徴です。
法人事業
法人事業では、ATMや銀行事務のノウハウを活かし、金融機関や事業会社へサービスを提供しています。
具体的には、法人向けのATMサービスや、不正検知や本人認証などのセキュリティ面でのサービスがあります。
身近ではないけど、法人向けの事業もあるんだね!
海外事業
海外事業では、国内ATMのノウハウを活かし、米国・インドネシア・フィリピンでATMサービスを提供しています。
世界におけるセブン&アイグループの店舗数とATMの設置台数は以下の図の通りです。
業績
単位:百万円 | 経常収益 | 経常利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|
2021年3月期 | 137,267 | 35,640 | 25,905 |
2022年3月期 | 136,667 | 28,255 | 20,827 |
2023年3月期 | 154,984 | 28,924 | 18,854 |
2024年3月期 | 197,877 | 30,526 | 31,970 |
2025年3月期(予想) | 215,000 | 28,000 | 19,500 |
2023年7月に、クレジットカード・電子マネー事業を行う「株式会社セブン・カードサービス」を連結子会社化したことなどにより、2024年3月期は増収・増益を実現しています。
また2021年度から始まった中期経営計画では、最終年度である2025年度の連結経常収益の目標を1,700億円、連結経常利益の目標を350億円と設定していました。
しかしこれらの値を修正し、連結経常収益の目標を2,500億円、連結経常利益の目標を450億円まで引き上げました。
目標を引き上げるなんて強気だね!
2025年3月期第2四半期決算まとめ
2025年3月期第2四半期決算は、経常収益が1,062億円(前年同期比+15.2%)、経常利益が167億円(同+2.1%)と増収増益で着地しました。
ATM利用件数の増加により経常収益は大きく増加しましたが、新しいATMへの入れ替えに伴う減価償却費が発生し、経常利益の伸びは小幅にとどまりました。
しかし、海外事業についてはフィリピンで引き続き好調を維持し、米国も7月から月次で黒字化しています。
業績および配当の会社予想に修正はなかったね。
また、11月から開始するクレジットカード会員獲得施策としての大規模な販促キャンペーンにより、リテール事業の成長がどの程度進展するかにも注目です。
同業他社と比較!セブン銀行の強みと弱みは?
💡このパートの要約
- 配当利回りが3.27%と高い
- 銀行内では自己資本比率が15.7%と高い
- ATM事業への依存度が高い
セブン銀行は流通系銀行として知られていますが、他の流通系銀行は上場していません。
そこでネット銀行として人気があり、上場している「住信SBIネット銀行(7163)」、「楽天銀行(5838)」と比較した特徴を見ていきましょう。
まずは、以下に各社の主要財務データと参考指標を表にまとめます。
セブン銀行 | 住信SBIネット銀行 | 楽天銀行 | |
---|---|---|---|
売上高 | 1,978億円 | 1,185億円 | 1,379億円 |
当期純利益 | 319億円 | 248億円 | 344億円 |
経常利益率 | 15.4% | 29.4% | 35.0% |
自己資本比率 | 15.7% | 1.4% | 1.9% |
ROE(自己資本利益率) | 12.2% | 17.5% | 14.5% |
PER(株価収益率) | 20.19倍 | 15.49倍 | 15.05倍 |
PBR(株価純資産倍率) | 1.42倍 | 2.68倍 | 2.47倍 |
EPS(1株当たり純利益) | 16.67円 | 185.71円 | 265.04円 |
配当利回り | 3.27% | 0.64% | 0.0% |
配当性向 | 40.3% | 10.0% | 0.0% |
セブン銀行の強みと弱みは、大きく以下の3つが挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。
配当利回りが3.27%と高い
セブン銀行の配当利回りは3.27%であり、高いです。
各企業の配当利回りを見てみましょう。
配当利回り(予想) | |
---|---|
セブン銀行 | 3.27% |
住信SBIネット銀行 | 0.64% |
楽天銀行 | 0.0% |
他銀行と比較してもセブン銀行のみ配当利回りが高いことが分かります。
同行は、配当性向について年間40%以上を最低目標としており、株主還元に力を入れていることが分かります。
過去の配当額の推移は、以下の図の通りです。
セブン銀行は株主優待はあるのかな?
セブン銀行は、株主優待制度は実施していません。
自己資本比率が15.7%と銀行内では高い
セブン銀行は、自己資本比率が15.7%であり、他行より高くなっています。
自己資本比率とは、総資産に対する自己資本の割合のことを指します。
自己資本は他人資本(負債)とは異なり返済・支払義務がないため、自己資本比率が大きいほど財務安全性の高い企業だと評価されます。
各企業の自己資本比率を比較してみましょう。
自己資本比率 | |
---|---|
セブン銀行 | 15.7% |
住信SBIネット銀行 | 1.4% |
楽天銀行 | 1.9% |
国際統一基準のバーゼル合意によって、海外営業拠点を持つ銀行は、達成すべき自己資本比率が8%以上と定められています。
この8%という基準と比較しても、セブン銀行は自己資本比率が高いことが分かります。
自己資本比率から、財務が健全であることが分かるね!
ATM事業への依存度が高い
セブン銀行の弱みとして、ATM事業への依存度が高いことが挙げられます。
特に、国内ATM事業は事業全体の51%を占めており、海外でもATM事業を展開していることを考慮すると、その割合は高いと言えます。
キャッシュレス化によってATM事業に逆風が吹く中で、ATM事業への依存度が高いことはリスクになるでしょう。
確かに、ATMの需要が減ってきたら怖いね…
セブン銀行の株価は今後どうなる?将来性を分析
💡このパートの要約
- 2015年に株価が最高値を更新して以降、下落が続く
- キャッシュレス化への対応が重要になる
- セブン銀行の将来性は、事業の多角化がカギ
セブン銀行の株価は今後どうなっていくのでしょうか。
株価の推移を見ながら、将来性や今後の見通しを分析していきます。
株価の推移
セブン銀行の株価推移を改めて見てみましょう。
まず、2015年に株価が最高値を記録していることが分かります。
この理由は、経済が低迷している中5期連続で増収増益を達成し、注目を集めていたためです。
しかし、ローソンも銀行業に参入することを公表したこともあり、その後は下落が続きます。
また2019年からは上述した通り、キャッシュレス化の推進やATMの入れ替えによるコスト増加によって株価が上がらない状況が続きました。
しかし、2023年はセブン・カードサービスを連結子会社化したことなどによって業績が上がり、一時的に株価は上昇しています。
キャッシュレス化への対応
今後業績を上げていくには、キャッシュレス化に対応していくことが重要となります。
したがって、クレジットカードや電子マネー事業を行う「セブン・カードサービス」の事業をより成長させていく必要があるでしょう。
実際にセブン銀行は、中期経営計画において、以下のようにカード・電子マネーの事業を発展させていくことを目標としています。
カード・電子マネー事業の成長に期待したいね!
事業の多角化がカギ
セブン銀行の今後の成長を握るカギは、ATM以外の事業の多角化にあると言えるでしょう。
実際に中期経営計画でも、事業の多角化として、「強みを活かしATMに次ぐ成長領域を拡大」することを成長戦略と定めています。
そしてそれを実行すべく、2023年度にはセブン・カードサービスを連結子会社化することや、+Connectという新たなサービスを開始することで事業の多角化を進めています。
今後もATM以外の事業を伸ばしていくことが業績や株価の向上につながるでしょう。
今後の事業戦略に注目だね!
【まとめ】セブン銀行の株価が安い理由
セブン銀行の株価が安い理由について、よくわかったよ!
最後にこの記事の重要なポイントをまとめます。
かぶリッジの結論
- セブン銀行の株価が安い理由は主に3つ!
- 配当は高いが、ATM事業への依存度が高い点が弱み
- セブン銀行の今後の株価は、事業の多角化がカギ
セブン銀行は、キャッシュレス化の推進や海外事業が不振であること、ATM入れ替えのコスト増加による利益圧迫によって株価が安くなっていることが分かりました。
しかし、配当利回りが高いことや、自己資本比率が高く財務が健全であることは投資家にとってプラスの要素です。
カード・電子マネー事業の発展や、事業の多角化に成功すれば同行の株価は上昇していくことが予想されます。
セブン銀行の今後の動向に注目だね!