
・不二サッシってどんな会社?
・サッシメーカーの将来性はどうなの?
・老舗企業だけど成長できるの?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- リニューアル事業の拡大
- 中期経営計画で既存事業の底上げも目指す
- 環境対応製品の需要拡大が追い風に
不二サッシは、1930年創業の老舗建材メーカーです。
1958年に日本で初めてビル用アルミサッシの製造・販売を開始したパイオニアとして、ビル用サッシやカーテンウォール分野で独自のポジションを確立しています。
そこで今回は、不二サッシの将来性について、事業内容や業績、強みの観点から詳しく解説します。

新規事業の成長が注目だワン!

執筆:かぶリッジ編集部
かぶリッジは、20年以上にわたり投資家向けサービスを提供する株式会社インベストメントブリッジが運営しています。日本株投資や米国株投資を実践する編集部メンバーや、現役の証券アナリスト、元証券会社勤務の社員等で運営しています。
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不二サッシの将来性は?3つの理由を解説

💡このパートの要約
- リニューアル事業の拡大
- 中期経営計画で売上1,100億円、営業利益33億円を目指す
- 省エネ・断熱改修の需要拡大が追い風
不二サッシの将来性が高いと考えられる理由は、以下の3つです。
リニューアル事業の拡大
不二サッシの最大の成長ドライバーは、リニューアル事業の拡大です。
日本の建築市場は、人口減少により新築需要が伸び悩む一方で、高度経済成長期に建設されたオフィスビルや商業施設の老朽化が大きな課題となっています。
これらの建物は、設備や外装の劣化だけでなく現在の省エネルギー基準や耐震基準を満たしていないケースも多く、建て替えや大規模改修が必要です。

国土交通省の調査によると、非住宅分野におけるリノベーション・改修工事の受注高は増加傾向にあり、新築から既存建物の活用へと需要がシフトしていることが分かります。
このような環境下で求められている改修工事は、単なる老朽化対応にとどまりません。
ZEBへの対応や異常気象・地震への備えなど、付加価値の高いリニューアル需要へと多様化しています。
ZEBとは「Net Zero Energy Building」の略で、高断熱化や高効率設備を導入してエネルギー消費を抑え、その分を太陽光発電などで補うことで、年間のエネルギー収支を実質ゼロにする建築物を指します。
単に省エネ性能を高めるだけでなく、快適性と環境性能を両立することが求められる点が特徴です。
同社が強みとする、ビルサッシ・カーテンウォールの受注は、省エネルギー対策需要による非住宅のリノベーション受注件数の増加に伴い、安定的に伸びています。

改修需要が増える中でも、特に非住宅分野の窓・外装まわりが伸びているんだね。
同社のリニューアル事業は、マンションやオフィスビルにおける窓改修を中心としています。
既存の窓枠を活かす「カバー工法」を採用することで、工期を短縮できる点が特徴です。
この工法により建物の利用を止めずに工事を行えるため、発注側にとって導入しやすいサービスとなっています。
こうした特性から、新築需要や景気動向の影響を受けにくく、継続的な受注が見込めるストック型ビジネスとして収益の安定化に寄与しているのです。

窓改修だけでなく、内装も含めた付加価値提案に広がっていきそうだね!
また、長年積み上げてきた大手ゼネコンとのパイプも収益基盤の安定性に貢献しています。
カーボンニュートラル実現に向けて、既存建物の省エネ性能向上が重要視されており、非住宅の省エネルギー需要は今後さらに高まると予想できるでしょう。

政策的な後押しもあって、リニューアル事業の成長が期待できるワン!
中期経営計画による明確な成長戦略
不二サッシは2025年5月、2025年度から2027年度までの中期経営計画を発表しました。
この計画では業務のデジタル化等による生産性向上、新商品開発・プロセス管理によるさらなる収益力強化を掲げています。
中期経営計画の数値目標(2027年度)
- 売上高:1,100億円
- 営業利益:33億円以上
- ROE:8.0%以上
- ベースアップ(従業員):+3.0%以上/年
- 配当金(投資家):30円/株
※同社は2024年10月に株式併合(10株→1株)を実施しており、1株配当はその前提で開示されています。
この中期経営計画の特徴は、単なる業績拡大ではなく、「三方良し」の実現を明確に掲げている点です。
不二サッシが定義する「三方良し」とは、企業・従業員・投資家の三者が、それぞれ持続的に価値を得られる経営を指します。

具体的には、企業は営業利益33億円以上の確保による収益基盤の強化、従業員は年3.0%以上のベースアップによる処遇改善、投資家は30円配当を通じた安定的な株主還元を目標としています。
このように、利益成長を起点に、従業員への還元と株主還元を同時に実現しようとする姿勢が、中期経営計画の重要な柱です。

「三方良し」の実現による株主還元にも注目だね!
中期経営計画の数値目標達成に向けて、同社は以下の重点戦略を推進しています。

重点戦略
- 建材事業の強化:高収益化、効率化、省人化推進、VE/CD提案強化など
- 形材外販事業の拡大:アルミ加工品の売上拡大、内製化、付加価値高い製品へのシフト
- 収益構造の改革:既存中心から成長性のある周辺・新規事業へ資源をシフト
- 人・組織・IT基盤の再構築:人材育成・採用強化(通年採用・多様な人材)DX・システムの標準化
特に、人・組織・IT基盤の再構築は、人手不足が深刻化する建設業界において重要な競争力となります。
環境対応製品による新たな市場機会
不二サッシは、環境配慮型製品の開発にも力を入れています。
政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現に向けて、建築物の省エネ性能向上が義務化される流れです。
このような政策環境の中、需要拡大が見込まれます。
環境対応製品の例
- アルミリサイクル率100%の「Reサッシ R100」
- 自然風力換気窓のウィンブレス-EX
- リサイクル可能な太陽光発電用アルミフレーム
- 既存建物の断熱改修用製品

日本アルミ協会賞やGOODデザイン賞など外部評価実績も豊富だよね!
また、同社は都市ごみ焼却灰処理事業も展開しており、環境ソリューション企業としての側面も持っています。
循環型社会の実現に貢献する事業として、今後の成長が期待されます。
不二サッシの事業内容・業績

💡このパートの要約
- 不二サッシは建材・形材外販・環境・物流の4事業を展開
- 2025年3月期は全セグメントで増収増益を達成
- 2026年3月期も増収を見込む
ここでは、不二サッシの事業内容や業績について詳しく見ていきます。
事業内容
不二サッシは、建材を中心とした総合エンジニアリング企業として、以下の4つの事業セグメントを展開しています。
建材事業
建材事業はビル用サッシ、カーテンウォール、住宅用建材などの製造・販売・施工を行う主力事業です。

同社カタログより
2025年3月期の売上高は約754億円と、全体の約72%を占める中核事業となっています。
主な製品・サービス
- ビル用サッシ・カーテンウォール
- 住宅用サッシ・ドア
- リニューアル工事
- エクステリア製品
創業以来、培ってきたノウハウを駆使し、ビル用サッシやカーテンウォールなどの提案から設計・生産・施工・メンテナンスなど、一貫したサービスを提供し、営業利益も2025年3月期は前年比+32.8%と好調に推移しています。
形材外販事業
形材外販事業は、アルミ形材や精密加工品の製造・販売を行う事業です。
アルミ製造・加工の一貫生産システムを持ち、高いアルミ押出技術により、太陽光発電用フレームやパソコン・携帯電話の筐体など、多様な用途向けのアルミ製品を提供しています。

2025年3月期はアルミ地金市況に連動した販売単価の上昇やアルミ加工品および精密加工品の好調により増収増益です。
さらに近年ではアルミ押出加工技術をベースに更に軽量な金属であるマグネシウム合金の押出加工技術の研究・開発に取り組んでおり、様々な分野での応用が期待されています。

今後の研究開発に期待だね!
環境事業
環境事業では、都市ごみや産業廃棄物の飛灰を無害化するプラントの設計・施工を行っています。

上の画像のような大規模な処理システムを自社で運営しています。
さらに、液体系重金属処理剤や土壌用粉塵防止剤など、廃棄物処理を支える薬剤の開発・販売も実施中です。
物流事業
物流事業は、建材や製品の輸送・配送を行う事業です。
不二サッシは、グループ会社である不二倉業を通じて物流事業を展開しています。
不二倉業は、国内外の輸送、倉庫・保管・流通加工、ユニットハウス・防災関連事業などを手がける物流・特需事業会社です。

倉庫を自社で持つなど独自の全国物流ネットワークを活かし、安全・迅速・効率的なサービスを提供しています。
業績
不二サッシの業績は、以下の通りです。
| 決算期 | 2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | 2025年3月 | 2026年3月予想 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 90,430 | 101,700 | 101,260 | 104,754 | 107,000 |
| 営業利益 | 885 | 735 | 1,773 | 2,475 | 2,500 |
| 経常利益 | 1,101 | 960 | 2,186 | 2,742 | 2,750 |
| 当期純利益 | -3,326 | 338 | 1,714 | 2,225 | 2,150 |
| 営業利益率 | 1.0% | 0.7% | 1.8% | 2.4% | 2.3% |
※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は百万円単位。

全セグメントで増収増益を達成して、営業利益率も2.4%に改善したよ!
2025年3月期は、ビル新築事業とリニューアル事業が好調に推移し、建設資材の高騰や労働人口減少といった厳しい事業環境の中でも増収増益を実現しました。
2026年3月期の業績予想
- 売上高:1,070億円(前期比2.2%増)
- 営業利益:25億円(前期比1.0%増)
- 経常利益:27.5億円(前期比0.3%増)
- 当期純利益:21.5億円(前期比3.4%減)
2026年3月期も前年とほぼ同水準の業績を見込んでおり、堅調な業績推移が期待されます。

2026年3月期上期も前年同期比で黒字化が進んでるワン!
不二サッシの強みから見た将来性

💡このパートの要約
- 日本初のアルミサッシメーカーとしてのブランド力
- 設計から施工まで一貫対応できる総合力
- カーテンウォール技術における高い競争力
不二サッシの持続的な成長を支える強みは、以下の3つです。
日本初のアルミサッシメーカーとしてのブランド力
不二サッシの最大の強みは、90年以上の歴史を持つ老舗メーカーとしてのブランド力です。
1958年に日本で初めてアルミサッシを製造したパイオニアとして、業界をリードしてきました。
不二サッシの実績
- ホテルニューオータニ
- NHK放送センター
- 明治生命本館
- サンシャイン60
- 東京都第一本庁舎
- 丸の内ビルディングなど

長年の実績が、建築業界での信頼につながっているんだね!
特に不二サッシの製品は当時の住宅・公営団地で主に使われていた木製サッシやスチールサッシに比べて軽量性や気密性といった点で優れており、隙間風が少なく居住環境の快適さを高める立役者となりました。
このブランド力を今後リニューアル事業で活かし、安定的なストック収入の確保を実現しています。
設計から施工まで一貫対応できる総合力
不二サッシのもう一つの強みは、設計・生産から施工管理まで一貫して手がける総合力です。
単なる製品メーカーではなく、総合エンジニアリング企業としてオーダーメイド商品を手掛け顧客のニーズに応えています。
一貫対応の強み
- 顧客の要望に応じた製品設計
- 自社工場での製造による品質管理
- 専門技術者による施工管理
- アフターサービス・メンテナンス

一貫対応できることで、顧客の細かい要望にも応えられるワン!
この総合力は、複雑な建築プロジェクトでの競争力となっています。
特に、大規模ビルやタワーマンションなど、高度な技術が要求されるプロジェクトで強みを発揮します。
カーテンウォール技術における高い競争力
不二サッシは、カーテンウォール分野で高い技術力を誇ります。
特に同社のカーテンウォール試験センターでは、国内最大級の動風圧・層間変位試験装置を有し、国内で耐風圧試験が可能になるなどより正確なシミュレーションを実現しています。

サッシ業界は、LIXIL、YKK AP、三協立山の3強が大きなシェアを占める寡占市場ですが、不二サッシは非住宅のカーテンウォール分野で独自のポジションを確立しています。

高度な技術力が、大手との差別化要因になっているんだね!
特に、都市部の高層ビル建設において、耐震性と美観を両立させるカーテンウォール技術は高く評価されています。
【まとめ】不二サッシは今後どうなる?

ここまでの内容を踏まえ、不二サッシの将来性をまとめます。
かぶリッジの結論
- リニューアル事業の拡大
- 中期経営計画で既存事業の底上げも目指す
- 環境対応製品の需要拡大が追い風に
総合的に見て、不二サッシはリニューアル事業と環境対応製品を成長ドライバーとして、持続的な成長が期待できる銘柄と言えます。

新築市場の縮小を、リニューアル事業の成長でカバーする戦略が鍵だね!
最後に今後の事業戦略での領域設定をみてみましょう。
特に注目すべきは、リニューアル事業の成長です。
日本の建物ストックは約6,000万戸以上あり、その多くが築30年以上経過しています。
これらの建物の改修需要は、今後10年以上にわたって継続的に発生すると予想されます。
また、アルミ押出加工技術の応用による新製品開発にも期待が高まっています。
💡 投資判断のポイント
- 長期投資家向け:リニューアル事業の成長性と環境政策の追い風を評価する投資家に適している
- 建材以外の業績改善に期待:売上が伸び悩むセグメントの収益性改善に期待
- リスク要因にも注意:新築市場の縮小や資材価格の変動には注意が必要

中期経営計画の進捗状況を、四半期ごとに確認することが重要だワン!
不二サッシは、新築市場の縮小という逆風の中で、リニューアル事業というストック型ビジネスへの転換に成功しつつ非住宅で独自の地位を築いています。
中期経営計画の達成に向けた取り組みと、環境対応製品の需要拡大が、今後の同社の成長を左右するでしょう。
投資判断は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の責任において行ってください。







