
・戸田工業ってどんな会社?
・赤字決算だけど大丈夫なの?
・事業再編の影響は?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- 中期経営計画「Vision2026」で事業ポートフォリオを最適化
- 成長事業への経営資源集中で磁石材料・誘電体材料が好調
- 2026年3月期は黒字転換を見込む
戸田工業は、1823年に創業し、1933年に会社設立された老舗化学メーカーです。
着色用の顔料を中心に、電子部品向けの磁性材料や誘電体材料などを幅広く展開している企業です。
2025年3月期は赤字決算となりましたが、事業再編を進めながら2026年3月期は黒字転換を目指す方針です。
そこで今回は、戸田工業の将来性について、事業内容や業績、強みの観点から詳しく解説します。



事業再編の真っ只中にある同社の今後に注目だワン!


執筆:かぶリッジ編集部
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戸田工業の将来性は?3つの理由を解説


💡このパートの要約
- Vision2026で成長・収益基盤・次世代・再生転換の4区分に事業を整理
- 磁石材料や誘電体材料などの電子素材事業が好調
- 着色顔料やトナー用材料は成熟市場となり需要が減少
戸田工業の将来性はどうでしょうか?
以下の3つの観点から見ていきます。
中期経営計画「Vision2026」による事業ポートフォリオの最適化
戸田工業は2024年度から2026年度までの3ヶ年を実行期間とする中期経営計画「Vision2026」を策定しています。
この計画では、2030年度のありたい姿の達成を目指し、事業を以下の4つに区分しています。


Vision2026の事業区分
- 成長事業:磁石材料、誘電体材料
- 収益基盤事業:触媒向け材料
- 次世代事業:軟磁性材料
- 再生・転換事業:LIB用前駆体材料、着色顔料、トナー用材料



事業を4つに区分して、それぞれの成長ステージに応じた戦略を展開しているんだね!
戸田工業のはじまりは赤色顔料「ベンガラ」の製造であり、1823年から200年以上にわたって着色顔料を主力に事業を展開してきました。
しかし近年は、これらの機能性顔料よりも電子素材へシフトしており、磁石材料や誘電体材料など、より高付加価値な分野への展開を加速させています。


このように、収益性や成長性の高い事業を見極めながら、事業ポートフォリオの再構築を進めており、まさに現在事業再編の真っ只中にあるといえます。
将来的には、2030年度までに以下の目標を掲げています。
2030年度 目標
- 営業利益率:8%
- ROE:10%以上
- 自己資本比率:40%以上
磁石材料・誘電体材料で成長を牽引
戸田工業は、中期経営計画「Vision2026」において磁石材料と誘電体材料を成長事業に位置付け、経営資源を重点的に投入しています。
磁石材料と誘電体材料とは?
磁石材料は、モーターやセンサー内で使われる磁石の材料。自動車の電動化による需要が増えている。
誘電体材料は、セラミックコンデンサの材料。スマホ内の電子部品などに使われる。IoTや5G市場の拡大により需要が増えている。
2025年3月期の電子素材セグメントでは、これらの需要が好調であり、事業拡大に向けた投資が寄与し、売上高は前期比29.9%増の241億21百万円となりました。



これらの分野は、電動化やデータセンターの拡張など、今後の社会インフラを支える中核素材として事業拡大が期待されているね!
成長事業の主な特徴
- 磁石材料:高磁力・高耐食・高耐熱が強み。自動車の電動化により需要増。
- 誘電体材料:電子機器の小型化・高容量・信頼性向上を実現。IoTや5G市場の拡大により需要増。
また、次世代事業と位置付けている軟磁性材料においても、戸田マテリアルズ株式会社の連結子会社化及び業績が好調に推移したことが、売上増加に寄与しました。



成長分野である電子素材への投資が着実に成果を上げているね!
機能性顔料は成熟市場
着色顔料やトナー用材料は成熟市場にあり、特にトナー用材料は2025年3月期において需要が想定以上に減少しました。
着色顔料とトナー用材料とは?
着色顔料は、コンクリートやアスファルト、ゴムへの着色に使われる粉末。
トナー用材料は、複写機やプリンターで使われる粉状のインク。
これらの需要減少を受け、2025年3月期の売上高は前期比0.7%減の80億71百万円となりました。
戸田工業はこうした状況を踏まえ、製品価格の是正、原価低減、諸経費削減などの合理化活動を強化。
その結果、セグメント利益は前期比20.5%増の10億9百万円へと改善しました。



中期経営計画でも、再生・転換事業に位置付けられているね!
実際、機能性顔料セグメントの売上高比率は25.1%まで低下しており、同社は今後も成熟市場からの段階的シフトを着実に進めています。
戸田工業の事業内容・業績


💡このパートの要約
- 戸田工業は機能性顔料と電子素材の2つのセグメントで事業展開
- 2025年3月期は大幅な赤字を計上
- 2026年3月期は黒字転換を見込む
ここでは、戸田工業の事業内容や業績について詳しく見ていきます。
事業内容
戸田工業は、機能性顔料と電子素材の2つのセグメントで事業を展開しています。
機能性顔料セグメント


アスファルトのカラー舗装などに用いられる着色用粉末である顔料を製造しています。
2025年3月期の売上高は80億71百万円で、セグメント全体の約25.1%を占めています。
主な製品
- 着色顔料:着色用の粉末。コンクリートやアスファルト、ゴムへの着色に使われる。
- トナー用材料:複写機やプリンターで使われる粉状のインク。
- 触媒向け材料:燃焼を促進する材料。廃棄物焼却炉での燃焼助剤などに使われる。



最近では、復元中の首里城に使用するベンガラ色の着色材料を開発したね!
電子素材セグメント


同社HPより
磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、電池材料を製造・販売しています。
2025年3月期の売上高は241億21百万円で、セグメント全体の約74.9%を占める主力事業です。
主な製品
- 磁石材料:磁力を持つ材料。自動車や家電のモータ・センサーなどに使われる。
- 誘電体材料:電気を通さないが、電気をためる性質を持つ材料。セラミックコンデンサーなどに使われる。
- 軟磁性材料:磁場を外すとすぐに磁力がなくなる材料。インダクター(コイル)やノイズ対策部品などに使われる。
- 電池材料:電池の正極材の原料。リチウムイオン電池などに使われる。
業績
戸田工業の業績は、以下の通りです。


決算期 | 2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | 2025年3月 |
---|---|---|---|---|
売上高 | 35,332 | 34,934 | 26,234 | 31,667 |
営業利益 | 2,519 | 1,367 | 117 | △648 |
経常利益 | 4,184 | 3,349 | 1,168 | △1,411 |
当期純利益 | 3,116 | 3,268 | △3,581 | △3,563 |
決算短信を元に、かぶリッジ作成
2025年3月期は、磁石・誘電体・軟磁性材料の需要が堅調に推移し、売上高は前期比20.7%増となりました。
一方で、EV市場の成長鈍化により、連結子会社である戸田アドバンストマテリアルズ(TAM)の業績が悪化。
解散や清算に伴う損失計上したことで、大幅な赤字となりました。



2026年3月期の業績予想はどうなんだろう?
2026年3月期の業績予想
- 売上高:290億円(前期比8.4%減)
- 営業利益:9億円(前期は営業損失△6億48百万円)
- 経常利益:6億円(前期は経常損失△14億11百万円)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:2億円(前期は純損失△35億63百万円)
2026年3月期は、TAMに関する損失が当期よりも減少し、利益は改善する見込みです。



黒字転換を見込んでいるのは注目だね!
戸田工業の強みや弱みは?


💡このパートの要約
- AIやEV化の拡大を追い風に、成長事業のさらなる拡大が期待される
- CO₂固体回収材や有害物質除去材など、環境に配慮した素材開発を通じて脱炭素社会の実現に貢献
- 事業再編による収益性改善への取り組み
戸田工業の持続的な成長を支える強みは、以下の3つです。
AIやEV化の拡大が追い風に
戸田工業の成長事業である磁石材料や誘電体材料は、いま世界的なEV化とAIブームという大きな潮流に乗っています。
磁石材料は、ハイブリッド車やEV、電動工具など、モーターを使う製品に欠かせない素材です。



今後のEV市場の拡大に伴い、その需要は一段と高まると見込まれているね!
誘電体材料は、スマートフォンやIoT機器、AIデバイスなどに使われる重要な部材であり、通信の高速化や高周波対応に不可欠です。



AIや5Gの普及により、今後も成長が期待される分野だね!
近年はデータセンター投資の拡大により、これらの素材の需要が急速に拡大しています。
AIサーバーなどでもMLCC(積層セラミックコンデンサ)が従来比2倍の個数が使われるなど売上拡大が見込まれ、2ケタ増収が続く見通しです。
環境に配慮した素材開発
戸田工業は、脱炭素社会の実現や有害物質の抑制など、環境に配慮した素材開発にも積極的に取り組んでいます。
たとえば工場のボイラーなどから排出されるCO₂を常温で吸収し、100℃程度の熱で再放出・回収できる固体材料を開発中です。


そのほかにも、ゴミ焼却時に発生する有害物質「ダイオキシン」を抑える材料や、燃えにくいゴミを効率よく燃焼させてエネルギーの無駄を減らす「燃焼触媒材料」など、環境負荷の低減につながる技術を幅広く展開しています。



これらの技術は、排出物の削減やエネルギー効率の向上に直結し、地球温暖化防止にも大きく貢献しているね!
近年、一部では環境規制の緩和や撤廃の動きも見られますが、温室効果ガス削減へのニーズは依然として高く、同社の取り組みは今後も注目されます。
実際、これらの事業は中期経営計画「Vision2026」において次世代事業として位置づけられており、今後の成長をけん引する重要分野とされています。
事業再編による収益性改善への取り組み



戸田工業の懸念点はないのかな?
戸田工業はここ数年、収益性の低さが大きな課題となっています。
2024年3月期の営業利益率はわずか0.4%で、2025年3月期は赤字に転落しました。


特に、着色顔料やトナー事業は長年安定しているものの利益率が低く、同社はこの分野を「再生・転換事業」と位置づけ、価格改定やコスト削減などの合理化を進めています。
また、収益性の低いハイドロタルサイト事業については、2024年5月に協業を解消しました。
リチウムイオン電池(LIB)用前駆体材料についても、生産会社である戸田アドバンストマテリアルズ(TAM)を清算を決定しました。
こうした不採算事業の整理は、経営資源を成長事業に集中させる狙いがあります。
今後は、事業ポートフォリオマネジメントの強化を通じて、利益体質への転換が進むかどうかが注目されます。
【まとめ】戸田工業の株価は今後どうなる?


最後に、戸田工業の将来性についてまとめます。
かぶリッジの結論
- 中期経営計画「Vision2026」で事業ポートフォリオを最適化
- 成長事業への経営資源集中で磁石材料・誘電体材料が好調
- 2026年3月期は黒字転換を見込む
総合的に見て、戸田工業は事業再編の過渡期にあるが、中長期的には成長が期待できる銘柄と言えます。
プラス要因と注意点に分けて見てみましょう。
【プラス要因】
- 磁石材料・誘電体材料の成長事業が好調
- Vision2026による事業ポートフォリオの最適化
- TAMの整理により2026年3月期以降の収益改善が期待
- 触媒向け材料など収益基盤事業の安定性
【注意すべきリスク要因】
- 2025年3月期は大幅な赤字決算
- 2026年3月期は売上高が前期比8.4%減の見込み
- 配当は無配が継続
- 自己資本比率21.7%とやや低い水準
戸田工業の株価見通しとしては、短期的には事業再編の影響で変動が大きいものの、中長期的には成長事業への集中により業績改善が期待できます。
特に、2026年3月期の黒字転換が実現すれば、投資家の評価も改善する可能性があります。



事業再編の成果が出始めれば、株価上昇も期待できそうだね!
今後の戸田工業の成長事業の進展と事業再編の成果に注目です。