・アドバンテストの株価はなぜ上昇しているんだろう?
・今後の将来性はどうなんだろう?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- AI向け半導体の需要拡大と複雑化に伴い、半導体試験装置のニーズが急増中。
- 50%を超える市場シェアを誇り、25/3期の業績も絶好調!
- シリコンサイクルや米中摩擦の激化が懸念材料。割高であることにも注意が必要。
アドバンテスト(6857)は、半導体がきちんと動作するかを試験する「半導体試験装置(テスタ)」と呼ばれる装置を製造・販売する企業です。
ここ数年は半導体銘柄の株価が急上昇しており、2022年には約2,000円だったアドバンテストの株価も現在は1万円に迫る勢いを見せています。
このように盛り上がりを見せる半導体関連銘柄として、アドバンテストに注目している方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、アドバンテストの株価が上昇している理由や今後の将来性について分かりやすく解説します。
執筆:かぶリッジ編集部
かぶリッジは、20年以上にわたり投資家向けサービスを提供する株式会社インベストメントブリッジが運営しています。日本株投資や米国株投資を実践する編集部メンバーや、現役の証券アナリスト、元証券会社勤務の社員等で運営しています。
本記事の注意事項
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アドバンテストの株価はなぜ上昇?3つの理由を解説
💡このパートの要約
アドバンテストの株価が上昇している理由は…
- PC・スマホ・自動車向けは低迷している中、AI向け半導体の需要が急拡大。
- 半導体テスト装置市場で世界シェア50%以上を誇る。
- 絶好調な業績と株主還元の強化で株価上昇!今期純利益は前年比+95.9%の予想。
まず、アドバンテストの株価推移を見てみましょう。
ここ5年間のチャートですが、株価は大きく上昇していることが分かります。
どうしてこんなに上昇したんだろう?
大きく以下の3つに分けて、考察していきましょう。
AI向け高性能半導体の需要が急拡大!
アドバンテストの株価が上昇している理由の一つは、AI向け高性能半導体の需要が急拡大していることです。
ここ数年のAIブームを背景に、生成AIやデータセンターで使用されるAI向け半導体の需要が増加し、それに伴って試験装置の需要も高まっています。
特に、AI向け半導体の複雑化により、半導体の複数の機能を1つのチップに集約する「SoC(システム・オン・チップ)」の試験装置の需要が増えています。
また、半導体製造工程も複雑化しており、半導体製造企業は製造後だけではなく、設計段階や製造工程の各段階で何度も細かくテストを行う必要があります。
これに伴い、試験装置自体の需要も増えているのです。
半導体技術が高度化するにつれ、試験の回数を増やさなければ、不良品が増えてしまうんだね!
ここまでを簡単にまとめると、AI向け半導体の複雑化によって…
- 「SoC(システム・オン・チップ)」の需要が、最近特に増えている。
- 試験の工程を増やさざるを得ず、それに伴って試験装置もさらに必要となっている。
一方で、パソコンやスマホ、自動車向けの半導体需要は低迷しており、需要回復は依然として遅れています。
例えば、かつてパソコン向けCPUで黄金時代を築いたインテルは、AI向けの半導体開発においてエヌビディアなどに遅れを取っています。
実際にAIの波に乗ることができておらず、足元では赤字を計上し、CEOもその責任をとって退任しました。
また、ローム(6963)は電気自動車(EV)向けの半導体比率が高い企業ですが、世界的なEV需要の減速により、12年ぶりに赤字へ転落する見通しです。
AI向け半導体とそれ以外の半導体では、業績にこれほど大きな差が出るんだね💦
その中で、アドバンテストはAI向け半導体のテスト装置を主に販売しているため、これらの影響を受けずに業績を伸ばしたことで株価が上昇しました。
テスト装置市場で驚異の世界シェア50%以上
アドバンテストの株価が上昇している理由として、半導体テスト装置市場における世界シェアが58%に達している点も挙げられます。
2017年には36%だった市場シェアが、2023年には58%へと大幅に拡大しました。
アドバンテストとシェアを争う競合他社はどこなんだろう?
半導体テスト装置市場では、アドバンテストと米国企業のテラダインが2強として知られています。
テラダインは、アップルのiPhone向け半導体試験装置に強みを持っていますが、ここ数年iPhoneの販売台数が頭打ちとなり、需要が伸び悩んでいます。
一方で、アドバンテストは前述した通り、今後注目度の高いAI半導体の領域で需要が増加しているという側面があります。
このように、アドバンテストはAI向け半導体試験装置を手掛けていることが強みとなり、高い世界シェアを誇っていることで株価の上昇に繋がっています。
業績が絶好調!上方修正続出&株主還元を強化
アドバンテストの株価が上昇している理由には、業績が絶好調で、上方修正を続々と発表し、株主還元も強化している点も挙げられます。
直近の2025年3月期中間期決算では、売上高が3,292億円(前年同期比+51.4%)、営業利益は948億円(前年同期比+169.0%)となりました。
2Qでは、四半期ベースで過去最高を記録したよ!
また、通期予想も上方修正され、純利益は前年比+95.9%の1,220億円と、約2倍となる見通しです。
昨年は半導体需要の停滞により一時的に業績が落ち込みましたが、今年度は大きく回復する予想です。
半導体市場には、3〜4年周期で好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」と呼ばれる傾向があり、不況期には業績が悪化する年もあるんだワン!
さらに同社は、株主還元策として自社株買いを10/30に発表し、発行済み株式の約1.2%に相当する500億円を上限に実施する予定です。(取得期間は2024/11/1~2025/2/26)
また配当も4年連続で増配しており、配当利回りは24/3期では0.5%と低いものの、株主還元に積極的であることが分かります。
中間 | 期末 | 年間 | |
---|---|---|---|
2025年3月期 | 19.00円 | 未定 | 未定 |
2024年3月期 | 16.25円 | 18.00円 | 34.58円 |
2023年3月期 | 16.25円 | 17.50円 | 33.75円 |
2022年3月期 | 12.50円 | 17.50円 | 30.00円 |
2021年3月期 | 9.50円 | 20.00円 | 29.50円 |
このように、好業績により営業キャッシュフローの増加が期待され、手元資金を活用して株主還元と資本効率の向上を目指している点が、株価上昇の背景にあると言えるでしょう。
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アドバンテストの事業内容・業績
💡このパートの要約
- アドバンテストは、半導体試験装置を製造・販売している。
- 2024年3月期は、シリコンサイクルなどの影響もあり、業績は一時的に落ち込んだ。
- 2025年3月期は上方修正を発表し、大幅な業績回復が予想されている。
ここでは、アドバンテストの事業内容や業績について詳しく見ていきます。
事業内容
アドバンテストは、半導体がきちんと動作するかを試験する「半導体試験装置(テスタ)」と呼ばれる装置を製造・販売する企業です。
以下の3つの部門で構成されています。
半導体・部品テストシステム事業部門
主に、半導体テスト装置を製造・販売する部門です。
売上高の約7割を占める主要セグメントとなっています。
同社のテスト装置は、ウェーハを作る工程の最後と、パッケージ加工後の最終検査に加え、量産ラインの立ち上げ前段階での設計・評価工程、さらには製品に実装後のシステムレベルのテスト工程でも使用されています。
幅広い製造工程に対応可能な装置ラインナップを展開し、半導体製造プロセス全般を支えています。
メカトロニクス関連事業部門
テスト装置に関連する周辺機器を製造・販売する部門です。
例えば、半導体のテストを行う際に必要となる、テスト装置と半導体を繋ぎ合わせるインターフェースを製造しています。
テスト・ハンドラやデバイス・インターフェース、ソケット&サーマルコントロールユニットなどの製品があり、半導体の高精度なテスト結果を得るためには欠かせない存在となっています。
サービス他部門
テスト装置のアフターメンテナンスや運用保守といった顧客サポートサービスを提供しています。
半導体技術の進歩は目覚ましく、それに伴い製造装置や検査装置も高度化・複雑化しています。
このような環境下で、定期的なメンテナンスや適切な管理は製造プロセスの安定性と製品品質の維持に不可欠です。
このように、いずれの事業も複雑で高度な半導体製造を支える上で重要な役割を担っています。
業績
アドバンテストの業績推移は以下の通りです。
2022年度までは順調に業績を伸ばしていましたが、2023年度は業績が落ち込んでいることが分かります。
この要因として、半導体需要が一時的に低迷したことが挙げられます。
半導体市場には、3〜4年周期で好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」と呼ばれる傾向があり、2023年度はこのサイクルの不況期にあたり、半導体需要が減少しました。
シリコンサイクルはなぜ起きるんだろう?
シリコンサイクルが発生する背景には、設備投資のタイミングや在庫調整が難しいことが影響しています。
また、2023年度にはこのサイクルに加え、世界的なインフレの加速、ウクライナや中東情勢といった地政学的リスク、中国経済の停滞など複数の要因が重なり、需要がさらに落ち込む結果となりました。
今後の半導体需要はどうなっていくんだろう?
2024年以降は半導体需要が回復基調にあり、今後半導体需要は回復していく見込みです。
この回復を背景に2025年3月期は大幅な業績の改善が予想されています。
2025年3月期の業績予想をまとめると以下の通りです。
2025年3月期の連結業績予想
- 売上高:6,400億円(前年比+31.6%)
- 営業利益:1,650億円(前年比+102.1%)
- 税引き前利益:1,625億円(前年比+107.9%)
- 当期利益:1,220億円(前年比+95.9%)
半導体業界の業績を予想する上では、シリコンサイクルに着目することは欠かせないワン!
同業他社と比較!アドバンテストの強みと弱みは?
💡このパートの要約
アドバンテストは同業他社と比較して…
- 市場シェアが非常に高い
- 他の半導体企業と比べると利益率が低い
アドバンテストの強みや弱みは何でしょうか?
同じく半導体メーカーである「東京エレクトロン(8035)」、「レーザーテック(6920)」と比較した特徴を見ていきましょう。
まずは、以下に各社の主要財務データと参考指標を表にまとめています。
アドバンテスト | 東京エレクトロン | レーザーテック | |
---|---|---|---|
売上高(億円) | 4,865 | 18,305 | 2,135 |
営業利益(億円) | 816 | 4,562 | 813 |
当期純利益(億円) | 622 | 3,639 | 590 |
営業利益率 | 16.8% | 24.9% | 38.1% |
純利益率 | 12.8% | 19.9% | 27.7% |
自己資本比率(※) | 56.7% | 63.7% | 55.8% |
ROE(自己資本利益率) | 15.6% | 21.8% | 45.4% |
EPS(1株当たり純利益) | 84.16円 | 781.20円 | 654.49円 |
※アドバンテスト、東京エレクトロンの自己資本比率は単体のデータ。
アドバンテストの強みと弱みは、大きく2つが挙げられます。
市場シェアが非常に高い
アドバンテストの強みは何といっても、半導体テスト装置の世界シェアで50%を超えていることでしょう。
同社は長年の実績と信頼を築いており、テスト装置を他社製品に切り替えるには多大な労力がかかるため、高い市場シェアを維持しやすい状況にあると考えられます。
さらに、成長を見据えた事業投資を積極的に進めており、研究開発費を増強するなど、技術革新への取り組みを強化しています。
これにより、今後も市場での存在感を高め、さらに成長していくことが期待されます。
成長投資に積極的だけど、安定的・継続的な配当を実施しているね!
半導体業界の中では利益率が低い
アドバンテストは営業利益率が16.8%と、競合他社と比べて比較的低くなっています。
営業利益率 | 純利益率 | |
---|---|---|
アドバンテスト | 16.8% | 12.8% |
東京エレクトロン | 24.9% | 19.9% |
レーザーテック | 38.1% | 27.7% |
しかし、半導体業界は全体的に利益率が高く、16.8%という数字も決して低い値ではありません。
さらに、2024年3月期は一時的な業績の落ち込みが影響しており、前年の営業利益率は29.9%という高い水準でした。
どうして半導体企業の利益率は高いんだろう?
半導体業界は、高額な設備投資や高度な技術力が必要で、参入障壁が高いです。
したがって、市場シェアを高く保ちやすいため、価格競争になりづらく利益率が高くなっています。
また、最先端の半導体は非常に高額であり、高い付加価値を付けられることも影響しています。
アドバンテストの利益率は一時的に低くなっていますが、依然として高い水準を維持していると言えるでしょう。
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元証券ディーラーたけぞう氏×NCD(4783)注目の対談セミナー
今期大注目のNCD株式会社(4783)より下條社長がご登壇。
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アドバンテストの株価は今後どうなる?将来性や見通しを解説
💡このパートの要約
- AI向け半導体需要の拡大に伴い、今後もさらなる成長が期待できる。
- 米国の中国向け半導体輸出規制は、現状影響は小さいが、米中関係には引き続き注目が集まる。
- 割高で推移しており、シリコンサイクルや地政学的リスクの影響には注意。
アドバンテストの今後はどうなっていくでしょうか?
将来性や今後の見通しについて分析していきます。
AI関連の投資がさらに活発化し、半導体市場も拡大!
まず、AI向け半導体の需要は、AIが今後さらに進展していくにつれて拡大していくでしょう。
AIが高性能化することで、半導体も複雑化し、製造工程での試験を行う重要性がさらに高まると予想されます。
この点において、AI関連の投資が活発化する今後の市場で、AI向け半導体の売上をさらに伸ばすことが期待されています。
実際、アドバンテストは年初来の株価パフォーマンスが他の半導体銘柄と比べて非常に良好です。
年初来値上がり率 | 株価 | |
---|---|---|
アドバンテスト | 87.7% | 8,664円 |
東京エレクトロン | –0.7% | 23,840円 |
レーザーテック | -57.1% | 15,200円 |
ルネサス エレクトロニクス | -19.0% | 2,020.5円 |
ローム | -49.0% | 1,379.5円 |
東京エレクトロンは横ばい傾向、レーザーテックは大幅に下落しています。
また、ルネサスエレクトロニクスやロームなど自動車向け半導体企業の株価が下落する中で、アドバンテストの株価は大きく上昇しており、その強さが一層際立っています。
米国の中国向け半導体輸出規制がもたらす影響
また、米国による中国向け半導体輸出規制がもたらす影響についても考慮する必要があります。
米国は、12月に半導体製品全般の禁輸措置となる「エンティティ―・リスト」に中国企業140社を追加しました。
さらに、韓国や台湾への輸出も一部制限しており、中国によるAIの軍事転用が懸念されています。
日本の半導体企業に影響はないのかな?
すでに独自の輸出規制を行っている日本やオランダは規制対象外となっており、この規制による影響は限定的なものに留まることから株価は上昇しています。
しかし、今後米中の貿易摩擦が激化し、中国への輸出が更に制限されると、中国への売上比率が比較的大きいアドバンテストや他の半導体企業の業績にも影響が出る可能性があります。
このような中国リスクをしっかりと認識し、特にトランプ氏が大統領に就任してからの動向に注目することが重要です。
株価に割高感と過熱リスクあり
ここ最近、アドバンテストの株価は右肩上がりで上昇しており、投資家にとって割高感と過熱リスクが懸念されています。
アドバンテストのPERは50倍以上、PBRは10倍以上となっており、いずれも割高な水準です。
以下の表を見ても、他の半導体関連銘柄と比較してアドバンテストのPER、PBRは突出して高いことがわかります。
PER | PBR | |
---|---|---|
アドバンテスト | 53.0倍 | 13.6倍 |
東京エレクトロン | 20.9倍 | 6.1倍 |
レーザーテック | 19.1倍 | 9.8倍 |
これだけ高いバリュエーションは、業績の成長性を織り込んでいる反面、その期待に応えられない状況が発生した場合、株価が大きく下落するリスクも含んでいます。
特に注意したいのは、シリコンサイクルなど半導体業界特有の周期的な変動。
また、地政学的リスクなどの外部要因も、株価に影響を与えることが考えられます。
このように、現在は好調なアドバンテストですが、リスクをしっかりと理解し、自己判断で投資を行うことが重要です。
【まとめ】アドバンテストの株価はなぜ上昇している?
アドバンテストの株価が上昇する理由について、よくわかったよ!
最後にこの記事の重要なポイントをまとめます。
かぶリッジの結論
- AI向け半導体の需要拡大と複雑化に伴い、半導体試験装置のニーズが急増中。
- 50%を超える市場シェアを誇り、今期の業績も絶好調!
- シリコンサイクルや米中摩擦の激化が懸念材料。割高であることにも注意が必要。
アドバンテストは、今後さらに需要の増えるAI向け半導体に注力しており、今後さらに業績の向上が期待できます。
実際、今期の業績予想は2度の上方修正を行っており、自社株買いなどの株主還元にも力を入れています。
半導体企業は数多くありますが、企業によって行っている事業や工程には大きな違いがあります。
投資をする際は、その企業の強みを理解し、自己判断で投資を行いましょう。
東京エレクトロンや他の半導体銘柄については、以下の記事を参考にしてみてください!