
稲畑産業の将来性ってどうなの?
今から投資しても大丈夫かな?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- 130年を超える歴史や独自の高付加価値戦略で他の商社との差別化を実現
- 成長分野への重点投資でポートフォリオを強化中
- PBR1倍割れのバリュー銘柄として注目
稲畑産業は1890年創業の化学品専門商社で、情報電子・化学品・生活産業・合成樹脂の4つの事業を展開しています。
2025年3月期には売上高8,378億円(前期比+9.4%)、営業利益258億円(同+21.9%)と過去最高業績を更新。
アジアを中心とした海外展開でグローバルな成長を続けています。
そこで今回は、稲畑産業の強みを踏まえ、将来性を詳しく解説します。


執筆:かぶリッジ編集部
かぶリッジは、20年以上にわたり投資家向けサービスを提供する株式会社インベストメントブリッジが運営しています。日本株投資や米国株投資を実践する編集部メンバーや、現役の証券アナリスト、元証券会社勤務の社員等で運営しています。
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稲畑産業の将来性は?3つの観点から解説


💡このパートの要約
- 独自の製造加工・物流・ファイナンス機能で高付加価値を提供
- 環境・EV・食品分野への重点投資で成長加速
- PBR1倍割れで東証の資本効率改善要請により株価上昇期待
ここでは稲畑産業の将来性について、以下の3つの観点から考察していきます。
高付加価値を提供する独自の取り組み
稲畑産業の最大の強みは、他の商社にはない独自の機能を駆使した高付加価値の提供です。
同社は以下の3つの複合機能により、差別化されたサービスを顧客に提供しています。
多品種少量製造
- 多品種少量製造により、取引先の細かなニーズに対応
VMI(Vendor Managed Inventory)機能
- 顧客の代わりに、在庫の管理・補給を行うシステム
- ITを活用して、効率的な原料や資材の納入が可能に。


ファイナンス機能
- 強固な財務基盤をもとに、顧客が期待するファイナンス機能を提供
- これにより、顧客の資金負担軽減や為替リスク回避などの課題に対処可能



これらの機能によって、顧客のニーズに応え、信頼を獲得しているワン!
成長分野への重点投資による事業ポートフォリオの強化
稲畑産業は中期経営計画「New Challenge 2026」において、成長分野へ重点投資を行い事業ポートフォリオを強化中です。
各セグメントの成長戦略は以下の通りです。
セグメント | 詳細 |
---|---|
情報電子 | ・環境・エネルギー分野の拡大加速 ・半導体・電子部品関連ビジネスの強化(含む装置ビジネス) ・産業用インクジェット関連ビジネスの拡大(テキスタイル向け等) |
化学品 | ・EV分野における素材(バッテリー、モーター、ディスプレイ関連)の拡大 ・海外展開強化(グローバルな物流機能を使った各商材の拡販) |
生活産業 | ・大五通商とのシナジー発現によるEコマース拡大など ・再生医療、核酸・バイオ医薬品等成長分野への注力 |
合成樹脂 | ・コンパウンド機能の高度化 →~合弁会社設立による技術開発力強化、生産の効率化、品質管理の高度化 ・リサイクル事業、グリーンビジネスの拡大 ・自動車分野におけるEV向け拡大 ・非日系取引先の拡大 |
特に注目すべきは、情報電子セグメントの「環境・エネルギー分野の拡大加速」です。
具体的には以下の事業を行っています。
- 太陽電池関連
- 二次電池関連
- バイオマス発電関連
この環境・エネルギー分野において、2026年度は売上高260億円を見込んでおり、2030年ごろには売上高1,000億円を目指す方針です。
PBR1倍割れのバリュー銘柄
稲畑産業はPBR0.89倍で1倍を下回るバリュー銘柄として、投資家から注目を集めています。
稲畑産業の現在の財務指標は以下の通りです。
PBR | 0.89倍 |
---|---|
PER | 9.54倍 |
配当利回り | 3.73% |
ROE | 9.71% |



東証プライムに上場する卸売業の平均PERは10.9倍だよ!
2023年3月に東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請したことで、PBR1倍割れ企業の改善が急務となっています。
- 資本コストや資本収益性の的確な把握
- 取締役会での現状分析・評価
- 投資家との積極的な対話
- 成長投資や株主還元の実行
同社は、PER・PBRともに割安水準であり、PBRが1倍を割れていることからも、今後株価を上昇させる取り組みが求められていくでしょう。
一方、ROEは9.71%であり、比較的効率的な経営は実現できていると言えます。
稲畑産業の事業内容・業績


💡このパートの要約
- 情報電子・化学品・生活産業・合成樹脂の4つの事業分野を展開
- 2025年3月期は、売上高・営業利益・経常利益で過去最高を更新
- 2026年3月期は、増収・微減益を見込む
続いて、稲畑産業の事業内容と業績について詳しく見ていきましょう。
事業内容
稲畑産業は、情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の4つのセグメントで事業を展開する化学品専門商社です。
情報電子


液晶パネルやLED関連、デジタル印刷、再生可能エネルギー分野など、幅広い原料や製品を供給しています。
既存顧客とのビジネスを核としつつ、国内外の取引先との関係を強化し、欧米や東南アジアなど海外展開も積極的に進めています。
化学品


化学品原料を中心に工業品原料用途から車両、住環境用途に至るまで幅広く展開しています。
具体的には以下の通りです。
化学部門
- 石油化学関連産業に対する原料・中間物の販売
- 塗料、インキ、接着剤を三本柱に添加剤や溶剤など幅広い原材料を供給
- 自動車を中心に船舶や航空機で使われるエアバッグ・タイヤ・ガスケット等の原料や放熱材などを販売
建材部門
- 環境に配慮した建材、パーティクルボード、木材、住設機器、プラスチック製品やその原料などを販売
- 新規事業開発
生活産業


粧品等の家庭用品の原料を取り扱う「ライフサイエンスビジネス」と、農産物・水産物を取り扱う「食品ビジネス」を展開しています。
ライフサイエンスビジネスでは、医薬品や、防殺虫剤・日用品・化粧品等の家庭用品の原料を取り扱っています。
- ライフサイエンスビジネス
- 海外拠点での医薬品・化粧品原料の製造
- 再生医療用原料・機器調達
- 医薬品物流サービス
- 家庭用品の原料・資材調達、企画開発、受託生産 など
- 食品ビジネス
- 農産物・水産物を世界中から輸入・販売
- 国内でのブルーベリー栽培や、ワカメ養殖、水産加工事業 など
合成樹脂


生活用品からパッケージ、自動車部品、建築用部材など、多様な業界向けのプラスチック原料・製品を手掛けています。
製造加工機能を活用しものづくりをグローバルに支えています。
同社の売上の48.7%を占めており、主力事業と言えるでしょう。
業績
続いて、業績も確認していきます。
2025年3月期は、売上高837,838百万円(前期比+9.4%)、営業利益25,824百万円(同+21.9%)、当期純利益19,833百万円(同-0.8%)となりました。
以下は、22/3期以降の業績推移です。
22/3期 | 23/3期 | 24/3期 | 25/3期 | 26/3期(予想) | |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 680,962 | 735,620 | 766,022 | 837,838 | 870,000 |
営業利益 | 20,052 | 20,314 | 21,190 | 25,824 | 25,500 |
経常利益 | 21,648 | 19,110 | 21,393 | 26,134 | 25,500 |
当期純利益 | 22,351 | 19,478 | 20,000 | 19,833 | 19,500 |
ROE | 12.8% | 11.0% | 10.5% | 9.7% | ー |
同社決算短信より
業績は順調に拡大しており、25/3期は売上高・営業利益ともに4期連続で過去最高を更新しています。
稲畑産業の強みから見た将来性


稲畑産業の将来性が期待される理由として、同社の独自の強みが挙げられます。
上記3つの観点から見ていきましょう。
130年の歴史で培った強固な顧客基盤
稲畑産業の最大の強みは、1890年創業から130年以上にわたって培ってきた信頼関係と顧客基盤です。
- 取引先は、化学メーカーから、電機・精密機器、自動車、日用品、住宅関連まで多分野
→ 安定収益の確保、および革新的な新製品や新用途の探索が可能に - 主なパネル製造国の変遷(日本⇒台湾⇒中国・韓国)に、現地拠点の人員整備などの面で対応
→ いち早く現地メーカーとの取引開始
また、強固な顧客基盤に加え、化学商社は参入障壁が高い業界です。
長年にわたって築き上げた顧客との信頼関係、専門知識、グローバルネットワークは、一朝一夕では構築できない貴重な資産と言えるでしょう。
アジア中心のグローバルネットワーク
稲畑産業はアジアを中心とした戦略的なグローバル展開に強みを持っており、他社との差別化を図っています。
グローバル展開の実績
- グローバル19カ国70拠点で事業を展開
- 日本を除くアジアに11カ国56拠点を配置
- 連結総従業員数の64%(約3,000人)をアジアに配置
同業の長瀬産業が欧米を含めて満遍なく展開しているのに対し、稲畑産業はアジア市場に集中して深耕する戦略を取っています。
特に東南アジアと北東アジアを中心に拠点を設置。
それぞれ以下のセグメントに注力しています。
地域 | 注力セグメント | 戦略 |
---|---|---|
東南アジア | 合成樹脂事業 | 業界トップレベルの生産力を有するコンパウンド事業を差別化要因とする |
北東アジア | 情報電子事業 | フラットパネルディスプレイ材料を中心に、顧客層や取扱商材を順次増やす |
この戦略により、アジアの成長市場での存在感を高め、効率的な事業展開を実現しています。
安定した高配当による株主還元
稲畑産業は安定した高配当による株主還元でも投資家から評価されています。
項目 | 数値 | 特徴 |
---|---|---|
配当利回り | 3.77% | 比較的高配当 |
25/3期配当 | 125円 | 増配(前期比+5円) |
配当方針 | 累進配当 | 「NC2026」の期間中は減配なし |
総還元性向 | 50%程度 | バランスの良い還元 |



高配当バリュー株は、個人投資家にとって嬉しいね!
【まとめ】稲畑産業の将来性は?





稲畑産業の将来性についてよく理解できたよ!
今回は稲畑産業の将来性について詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
かぶリッジの結論
- 130年を超える歴史や独自の高付加価値戦略で他の商社との差別化を実現
- 成長分野への重点投資でポートフォリオを強化中
- PBR1倍割れのバリュー銘柄として注目



成長性、安定性、割安性の3つが揃っているのは魅力的だね!
特にPBR改善への取り組みに注目していこう!
稲畑産業は化学品専門商社として確固たる地位を築いており、堅実な成長と高い収益性を両立しています。
ただし、投資にはリスクも伴います。
円高の影響や化学品市況の変動などには注意が必要です。
しかし、長期的な観点から見れば、稲畑産業は魅力的な投資対象と言えるでしょう。
中小型株でありながら安定した業績と高配当を実現している稲畑産業に、ぜひ注目してみてください。