・三菱重工業の株価が上がっているのはなぜ?
・他の重工メーカーとの違いは?
・今後株価は10倍に上がるの?買い時はいつ?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- 株価が上昇している理由は、収益性の高い分野に集中したため
- 国の防衛強化に伴い、受注高も増加
- トランプ次期大統領の政策次第で株価が変動する可能性あり
- 市況や海外情勢の影響を強く受けるため、ボラティリティが高い点には注意が必要
三菱重工業は発電用タービン、造船、航空、宇宙などの製品・技術を持っています。
最近の業績は好調であり、株価も急上昇。
この記事では、三菱重工業の株価が上昇している理由や将来性、買い時について詳しく解説します。
執筆:かぶリッジ編集部
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三菱重工業の株価はなぜ上がる?理由3つを解説
三菱重工業の株価が上昇している背景には、いくつかの理由があります。
大きく以下の3つに分けて解説します。
ガスタービンの受注高が増加
三菱重工業の株価が高い理由の一つ目は、エナジー分野であるガスタービンの受注高が増加していることが挙げられます。
ガスタービンって何だろう?
ガスタービン・コンバイドサイクル発電プラント(GTCC)は、天然ガスなどの燃料を使用した最もクリーンかつ効率的な発電設備です。
発電効率の良さは世界でも高水準であり、CO2排出量は従来の石炭火力発電のおよそ50%と環境にも配慮されています。
GTCCは主にアメリカで受注が大幅に増加しており、売上・利益ともに好調となっています。
2020年時点の世界シェアは約25%でしたが、2023年には36%と拡大し2年連続1位となっています。
同社はGTCCに力を入れることで収益性を確保しているよ!
特にエナジー分野は三菱重工業の主要分野であるため、今後もGTCCには力を入れていくと考えられます。
航空・宇宙分野の増収増益
株価が高い理由の2つ目は、コロナショックが明けたことによる航空・宇宙分野の増収増益です。
三菱重工業は、世界の航空機の開発・生産のチームに参加しており、部品の製造を担当しています。
コロナ禍では旅行客が減り航空機の需要も少なくなっていましたが、現在ではコロナショック以前の事業規模に戻りつつあります。
民間機も採算改善と為替円安の影響などにより増収増益となっています。
コロナが明けたことは航空産業に大きく影響しているね!
防衛事業の強化
株価が高い理由の3つ目は、国の防衛産業強化による影響です。
ロシア・ウクライナの問題により、世界的に防衛力を強化しようという動きがあります。
そのような中で日本も、尖閣諸島や台湾に対する中国の動向、北朝鮮のミサイル発射など複雑な安全保障環境に直面しており、防衛力の強化は必然となっています。
加えて、自民党総裁に就任した石破茂氏は、アジア版NATOの設立を掲げるなど防衛力の強化に意欲を示しているため、防衛関連銘柄に追い風となりました。
三菱重工業は日本国内の防衛産業を大きく担っているため、国が防衛産業を強化しようとする動きは同社にとってプラスとなります。
実際、防衛費の増加に伴い、同社は新たな戦闘機の開発もしています。
三菱重工業の事業内容・業績
三菱重工業は、エナジー、インフラ、物流、航空などさまざまな事業を展開していて、日本の重工業を大きく担っています。
ここでは、三菱重工業の基本情報について詳しく説明していきます。
事業内容
三菱重工業では、以下4つの事業領域を展開しています。
エナジー
同社はエナジートランジションに積極的に取り組んでいます。
エナジートランジションとは、既存のエネルギーシステムから異なるエネルギーシステムへ移行することだよ!
ただ化石燃料を減らし、再生可能エネルギーに切り替えてきた今までは、価格高騰などにより安定してエネルギーの供給ができませんでした。
これに対し同社は、電力部門の脱炭素化と世界中の人々への安定したエネルギー供給のバランスを保つという実現可能性の高いエナジートランジションを掲げています。
「火力発電システム事業」では、世界最高水準の高効率・高い信頼性、および水素焚きへの転換を強みにしています。
三菱重工のガスタービンは世界トップクラスのシェアを誇るよ!
「原子力事業」では、既設プラントの再稼働やその後の保全工事などを手掛けています。
また、世界最高水準の安全性を有する革新軽水炉や高温ガス炉などの開発にも取り組んでいます。
三菱重工業では、さまざまなエナジー事業で製品・サービスの両面から安定的なインフラの提供を支えているのです。
プラント・インフラ
同事業では、脱炭素化やエネルギー効率へのニーズが高まっていることを背景に、同社でも省エネと需要側の脱炭素化実現に取り組んでいます。
環境に配慮した事業は今後も注目されるよ!
「エンジニアリング事業」は、CO2の回収、化学プラントの水素・アンモニア分野に注力するとともに、交通システムの提供も行っています。
「製鉄機械事業」では、材料やエネルギー効率のさらなる追求を可能にする製品ラインナップ展開や脱炭素化に向けた革新的な技術を提供しています。
その他にも、ごみ焼却発電設備やDX活用による既存事業の強化など幅広い事業を行っています。
物流・冷熱・ドライブシステム
同事業では、各国・各地域の物流における課題を解決する「物流機器事業」、エネルギー効率の高い快適な空間を創出する「冷熱事業」など多様な製品・ソリューションを提供しています。
特に、省エネ化製品や電動化製品の市場拡大に対応する新製品の開発にも取り組んでいます。
航空・防衛・宇宙
同事業では、民間航空機、防衛、宇宙の各分野を通じて国家レベルのプロジェクトに取り組み、世界中の人々の安心・安全に貢献しています。
「航空機事業」では、世界屈指の規模や技術力を有し、世界有数の航空機メーカーに民間航空機の主翼や胴体を供給しています。
「防衛事業」では、国の要請に基づき、数多くの防衛装備品の開発・生産・運用支援に携わっています。
国の防衛強化に大きく貢献しているよ。
「宇宙事業」では、日本の宇宙開発初期からロケット製造の中心的な役割を担っています。
製造から打ち上げまで一貫して行っている珍しい企業なんだよ!
業績
まず、直近5年間の業績推移を見てみましょう。
具体的な数値は以下のようになっています。
年度 | 売上収益 | 事業利益 | 当期利益 |
---|---|---|---|
2024年3月期 | 46,571 | 2,825 | 2,220 |
2023年3月期 | 42,027 | 1,933 | 1,304 |
2022年3月期 | 38,602 | 1,602 | 1,135 |
2021年3月期 | 36,999 | 540 | 406 |
2020年3月期 | 40,413 | -295 | 871 |
2024年3月期は、売上収益46,571億円(前年同期比10.8%増)、事業利益2,825億円(同46.1%増)、当期利益2,220億円(同70.2%増)となりました。
売上収益・事業利益ともに大きく増加しているね!
三菱重工業の業績は、右肩上がりの業績推移を示しています。
2017年から2020年までは業績の悪化が見られましたが、ガスタービンの受注に力を入れ始めたことをきっかけに業績が上がってきました。
また、コロナが明けたことによる航空事業分野の伸びも大きいでしょう。
以上の通り、外部要因での業績変化が大きい会社であるため、今後の景気や他国のニュースを注目していく必要があります。
直近のニュースや景気に関する講演、銘柄選びのコツなどはかぶリッジの無料セミナー(アーカイブ動画あり)もご覧ください。
2025年3月期第2四半期決算まとめ
2025年3月期の中間期決算は、売上収益33,835億円(前年同期比+7.9%)、事業利益1,884億円(同+86.7%)となりました。
「エナジー」「プラント・インフラ」「航空・防衛・宇宙」の3セグメントで増収・増益を果たしています。
中でも「防衛・宇宙」における「航空機・飛昇体」の売上収益が大きく増加したワン!
事業利益が大幅に増加した理由は、売上の増加、利益率の改善、そして円安の影響が主な要因です。
これらの結果、受注・売上収益・各利益ともに上半期において過去最高を達成しました。
当期利益の進捗率に関しても46.6%(5年平均は31.8%)となっており、順調と言えるでしょう。
本決算を受け、通期の受注高予想を2,000億円増額し、6兆円に引き上げましたが、売上収益や利益の見通しは据え置きました。
社長も記者会見で、「2024年度の計画の達成は可能」とコメントしているよ。
大手重工メーカー3社を比較!三菱重工業の強みと弱みとは?
💡このパートの要約
- 収益性が高く、健全な財務状況を維持している
- PERやPBRが高く、割高水準となっている
類似企業の川崎重工業(7012)、IHI(7013)と比較した、三菱重工業の強みや弱みを見ていきましょう。
大きく以下の強み、弱みが挙げられます。
大手重工メーカーの競合企業と比較してみましょう。
決算期(2024年3月期) | 三菱重工業 | 川崎重工業 | IHI |
---|---|---|---|
受注高 | 66,840億円 | 20,834億円 | 13,768億円 |
売上収益 | 46,571億円 | 18,492億円 | 13,225億円 |
事業利益 | 2,825億円 | 462億円 | -701億円 |
事業利益率 | 6.1% | 2.5% | 0% |
税引前当期利益 | 3,151億円 | 319億円 | -722億円 |
ROE | 11.1% | 4.2% | -16.9% |
PER | 32.8倍 | 16.8倍 | 16.3倍 |
EPS | 66.07円 | 151.51円 | -450.78円 |
PBR | 3.34倍 | 1.92倍 | 3.41倍 |
配当利回り | 0.98% | 1.91% | 1.31% |
株価は12月27日の前場引値。
強み:高い収益性
三菱重工業は他2社と比較すると業績が良く、特に受注高と売上収益が業界トップです。
総合重機の案件は長期的なものが多いため、受注から売上に計上されるまでに時間を要しますが、三菱重工業は受注・売上ともに拡大しています。
売上規模が大きいにもかかわらず、利益率も3社の中でトップの6%台。
収益性の低い分野を削ることで、高い収益性を実現する戦略を打ち出しています。
この戦略による業績の見通しが発表されてから、株価が大きく上昇してきたよ。
弱み:株価の割高感
三菱重工業の弱みは、株価の割高感です。
上記の表からわかるように、PERは32.8倍と他2社と比べて高い水準となっています。
またPBRも比較的高く、割高と言えるでしょう。
期待感で買われすぎているとも言えるため、注意が必要です。
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三菱重工業の株価10倍成長の可能性は?
三菱重工業の株価は今後どうなっていくでしょうか。
株価の推移を見ながら、10倍成長の可能性があるか解説します。
株価10倍成長の可能性はない
三菱重工業の株価が10倍に成長することはないでしょう。
三菱重工業の時価総額は現在約7兆円のため、10倍となると約70兆円。
日本の時価総額トップのトヨタが約50兆円であることを考えると、さすがに10倍は難しいと考えられます。
PER30倍超、PBR3倍超であることからも、今後の上昇余地は限られると言えるでしょう。
ただし、~2倍程度であれば業績や市況次第であり得るため、以下にて解説します。
①好調な株価推移
同社の株価は、受注高の増加、コロナが明けたことによる航空・宇宙事業の拡大、ロシア・ウクライナ問題による防衛事業の強化により上昇しています。
特に2023年5月頃から大きく上昇し、受注高増加による業績の好調を評価した買いが見られます。
②株式分割による影響
2024年4月1日付で1対10の株式分割が行われたことで、個人投資の拡大が期待されています。
株式分割を行うと株式の最低購入金額が下がるため、その企業の株式を買いたいと思う投資家が株式を買いやすくなり、株価が上昇する可能性が高いです。
③トランプ次期大統領就任による影響
2024年11月のアメリカ大統領選においてトランプ氏が当選したことを受け、防衛関連株の三菱重工業に注目が集まっています。
そしてトランプ次期大統領は、12月22日に国防総省の高官人事を発表し、国防次官にコルビー氏を起用することを明らかにしました。
コルビー氏は、「日本の防衛費をGDPの3%程度に増額する必要がある」との見解を示していることからも、日本に対して防衛費の引き上げを要求する可能性は十分にあります。
参考:日本経済新聞「米国防次官にコルビー氏 日本の防衛費GDP比3%主張」
足元では名目GDPの水準も引き上がってきているよ!
そのため、国の防衛事業案件の多くを担う三菱重工業の株価はより上昇すると考えられるでしょう。
トランプ次期大統領がどのような安全保障政策を実行するかによって、株価が大きく動く可能性がある点にも注意が必要です。
株価上昇が始まる前の2023年4月の終値は512円でしたが、2024年12月26日の終値は2,250円で4倍を超えています。
バリュエーション面では高すぎる面もありますが、今後様々な要因により株価が上昇する可能性も。
長期的に1.5倍~2倍成長する可能性はあるでしょう。
【まとめ】三菱重工業株は買い時?魅力と注意点!
最後にこの記事の重要なポイントをまとめます。
結論、三菱重工業の株は10倍成長する可能性はないですが、まだまだ上昇余地はあります。
かぶリッジのまとめ
- 株価が上昇している理由は、収益性の高い分野に集中したため
- 国の防衛強化に伴い、受注高も増加
- トランプ次期大統領の政策次第で株価が変動する可能性あり
- 市況や海外情勢の影響を強く受けるため、ボラティリティが高い点には注意が必要
三菱重工業の株価上昇の理由は、収益性の高い分野に集中したこと、国の防衛強化に伴う受注高の増加です。
海外情勢によって今後の国の防衛費も変わるため、連動して株価も大きく上下します。
三菱重工業株をこれから購入しようと思っている方は、市況による業績悪化のリスクや株価上昇後の急落についても考慮しましょうね。