米国トランプ政権の誕生後、関税政策や地政学的リスクの高まりによって日経平均株価が左右される日々が続いています。
日本の株式市場の方向性が読みにくい時こそ、応援したいと思える“キラリと光る企業”を発掘したいところ。
今回は、株式ディーラー時代に50億円を稼ぎ、X(旧Twitter)で25万人超のフォロワーを抱える“たけぞう”さんが、個人投資家を代表して株式会社キッツ<6498> の河野社長 にインタビューを行いました。
この記事のまとめ
- 素材から一貫生産を行う老舗バルブメーカー。
- アスリート支援として2022年からレスリングの須﨑優衣選手を受け入れる。
- 第2期中期経営計画「SHIN Global 2027」を掲げ、さらなるグローバル展開を目指す。
- 第2期中計ではFY2027に売上高2,000億円、営業利益200億円を目標に掲げる。
- 拡大するデータセンター需要を、特に規模が大きい米国市場を中心に取り込んでいく方針。
- 中国の需要減少はインドや中東でのビジネス拡大でカバーをする狙い。
- たけぞうさんの感想:データセンターや半導体市場との関連性も深く、同社が「バルブメーカー」のイメージを超えた分野に進出していることは新たな発見でした。
インドや中東を足掛かりとした今後のグローバル市場での成長が期待されます。
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※アンケート締切:4月28日(月)
企業名 | 株式会社キッツ |
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市場・証券コード | 東証プライム・6498 1977年に東京証券取引所市場第二部上場 |
株価 | 1,245円 |
時価総額 | 109,019百万円 |
PER/PBR | 9.67倍/1.00倍 |
配当/配当利回り | 46円/3.69% |

お話を伺ったのは…河野 誠 氏
株式会社キッツ 取締役 代表執行役社長
1966年生まれ。東京都出身。
1988年キッツ入社。2021年 代表取締役社長 就任。
(指名委員会等設置会社への移行により、2024年3月より代表執行役社長)

お話を伺ったのは…須﨑 優衣 氏
1999年生まれ。千葉県出身。2022年4月キッツ入社。
東京オリンピック レスリング 女子フリースタイル50キログラム級 金メダリスト
パリオリンピックレスリング女子フリースタイル50キログラム級 銅メダリスト

インタビュアー…たけぞう
合同会社 Next Meeting 代表取締役。1988年に証券会社へ入社し約30年間勤務。
東京証券取引所において、4年間の“場立ち”を経て20年以上証券ディーラーとして活躍。多い時には約10億円の資金運用を託され、重圧と戦いながら約50億円の収益を上げる。
書籍:50億稼いだおっさんが教える 月5万稼ぐ株投資
X(旧Twitter):@noatake1127
※本記事は企業情報をご提供するもので、個別企業の株式売買を推奨するものではありません。
金メダリストも入社した老舗のバルブメーカー

本日はよろしくお願いします。
はじめに、御社の会社概要・事業内容について教えていただけますか?
河野氏:当社は1951年に創業し、70年以上の歴史を持つ会社です。
流体を制御するバルブを中心に、関連製品を製造・販売しています。


通常のバルブ製造では、外部から素材を調達して加工・組立・検査を行うことが一般的です。
しかし、当社は創業者が「バルブは“素材”が命」という志を持っていたことから、今も素材からの一貫生産にこだわっています。
加えて私たちは、さまざまな市場に対して対応できる商品ラインナップを持っているという強みがあり、実質的に世界でも指折りのバルブメーカーだといえます。





御社はバルブ事業のほかに伸銅品事業も手がけています。
具体的にどのようなものを製造されているのでしょうか。
伸銅品事業では、黄銅棒や黄銅加工品(切削品及び鍛造品)の製造・販売 を行っています。
製品は、水栓金具、ガス機器、家電製品および自動車部品などに使用されています。



御社の特徴として、オリンピック・レスリング女子日本代表の須﨑優衣選手が2022年4月に入社していることも挙げられます。
須﨑選手の入社理由や、御社の思いを教えてください。
当社では以前から「アスリートの支援を行いたい」という希望があり、一緒に成長してくれそうな選手を探していました。
そんなときに知人を通じて紹介してもらったのが須﨑さんです。
当時、私たちは2030年に向けて「Beyond New Heights 2030」という長期経営ビジョンを策定し、さらに高みを目指していこうというタイミングだったため、須﨑さんのアスリートとして高みを目指す姿勢が重なり、ぜひキッツに来てもらいたいと思いました。



須﨑さんにも当時のことをお伺いしたいです。
当時、どのような思いでキッツへの入社を決められたのでしょうか。
須﨑氏:私は千葉県出身で、キッツが30年近く幕張に拠点を構えていたこと、また私が東京2020オリンピックに出場し、幕張メッセの会場で金メダルを獲ったことから、キッツに縁を感じていました。


さらに、オリンピックで金メダルを獲る前、どの会社よりも早く声をかけてもらっていたことも入社を決めた理由のひとつです。
また、私は以前から「レスリング選手がいない会社に入りたい」と考えていました。
まだレスリング選手が所属していない会社に入社することで、レスリングという競技を少しでも多くの人に知ってもらいたいと思っていたからです。
これらの理由から、キッツへの入社を決意しました。



須﨑さん、ありがとうございます。
再び、河野社長にお伺いします。御社には多様な人材が在籍されていると思いますが、御社の人的資本経営や人材への投資、人材活用に関する取り組みについても教えていただけますか?
河野氏:私が社長に就任した時から常々思っているのは、やはり会社は「人」でできているということです。
人が働きがいを持って前向きに仕事ができなければ、どのような戦略・施策を立てても意味がありません。
そのため、長期経営ビジョンや中期経営計画(以下、中計)では「社員エンゲージメントの向上」 を掲げ、「エンゲージメントフォーラム」という社員と対話する機会を増やしています。
この取り組みは2022年から現在まで続けており、その結果が少しずつ出てきていますので、第2期中計でも「人的資本」と「DX」を基盤に、私たちの市場エリア戦略を固めていこうと考えています。



須﨑さんはどのようなところがキッツの魅力だと感じていますか。
須﨑氏:社員一人ひとりがとても優しく、社内に温かい雰囲気がある点が魅力的だと感じています。
また、私が入社したことでレスリングを初めて知った人や、レスリングに興味を持ったと話している人も多くいるのは嬉しいことです。


社員の皆さんが全力で応援してくれることは、レスリング選手として大変励みになっています。
グローバル展開を目指す「SHIN Global 2027」



御社の業種は、個人投資家からするとやや馴染みが薄く感じますが、御社自体は安定的に成長しており、株主還元も強化されていて、研究のしがいがある企業だと感じています。
2024年12月期決算では、第2期中計「SHIN Global 2027」を発表されましたが、第1期中計も含め、御社の長期経営ビジョンについて教えてください。
河野氏:私たちは2022~2024年の第1期中計、2025~2027年の第2期中計、2028~2030年の第3期中計というように3段階での成長戦略を組み立てています。
第1期中計では、当社のコア事業とグロース分野の両輪を回して、事業ポートフォリオを整えていく作業に取り組みました。
特にバルブ事業については、各市場での需要が見えるように市場別に管理する施策を行っています。
第2期中計では、今まで投資してきた生産能力に対してきちんと需要を刈り取り、もう一段高いレベルの、急勾配の頂きを登ろうとしています。
そのために今期から、「ビジネスユニット制 」へ社内組織を再編しました。


第1期中計で狙う市場を明確化したことで、市場ごとの売上利益を把握する体制が少しずつ整ってきました。
そこで第2期中計では、この情報を実践に活かし、さらにお客様に寄り添ってニーズを吸い上げたり、新しい製品開発を行ったりするなどして、お客様に私たちの応援団になってもらえるよう取り組んでいます。



「SHIN Global 2027」では、“3つのSHINで真のグローバル企業を目指す”と記載されています。
3つのSHINとは何なのか、そして今回の第2期中計のセンターピンは何なのか、 教えてください。
3つのSHINとは、「信頼」「新規」「進化」を指しています。
中でも「進化」という点について、今私たちは国内市場をベースに事業を組み立てて安定した成長を遂げていますが、「もし日本のマーケットがなくなったとき、海外のマーケットで生き残れるのか」ということをみんなで意識しよう、と話しています。
グループでの利益最大化のためには、海外でさらに利益を稼げるようにして、国内市場がなくても生き残れるようにしなければなりません。
それが“真のグローバル企業”だと社員に訴えながら、この3年間取り組んでいこうと考えています。
半導体市場の回復とM&Aによるシナジー効果で売上拡大を見込む



前期に当たる2024年度は、売上高1,720億円、営業利益142億円と、第1期中計の目標を達成しました。
第2期中計初年度に当たる2025年度は売上高1,800億円、営業利益150億円、最終年度の2027年度は売上高2,000億円、営業利益200億円を目標とされています。
この売上高や営業利益は、それぞれどのように増加させていくのでしょうか。
河野氏:本来は2025年度から伸長率を上げたいところですが、現在半導体市場が非常に不透明で立ち上がりが少し遅れている状況から、2025年度は現実的な数字にしています。


半導体のマーケットが回復すれば8つの市場全体の底上げが期待できます。
2026年度にはまた半導体の波が来ると考えていますので、これに8市場が連動し、売上と利益の伸長率を上げられると考えています。
それからもうひとつ、2022年から2024年の3年間は、自社工場を新しく建設するなどの設備投資を行ってきましたが、ここからの3年間ではいよいよM&Aに取り組もうと考えています。
8つの市場のうち、私たちが欲する機能を有する企業のロングリストを作成しており、グループインによって最もシナジーが大きくなる企業を買収する予定です。
その効果も含めて、2026〜2027年度の売上・利益目標を達成したいと考えています。
データセンター新設による需要増に期待



事業ごとに拝見すると、バルブ事業はコア部分の建築設備でデータセンター市場が好調、グロース部分では半導体装置が向かい風ながら、今後は拡大を見込んでいます。
それぞれの見通しを詳しく教えてください。
河野氏:データセンターは、第1期中計の頃から成長が期待できる分野として位置づけてきました。
実際に中国や米国、ASEAN、中東などさまざまなエリアで受注案件が増えています。
これらの地域は価格競争が激しいですが、その中でもしっかりと受注できている状況です。
これから先を見ても、恐らく2030年までは見通しが立てられそうですので、各地域に合わせた戦略を立て、データセンターの需要をグローバル規模で取り込みたいと思っています。
このデータセンターの案件については、本社内に統括チームを立ち上げる予定です。



データセンターの新設需要は、今後も続いていくとお考えでしょうか。
はい、続くと考えています。


特に北米のデータセンターは、日本のデータセンターよりも圧倒的に大きなものです。
受注量も桁違いで、規模が大きくなればその分バルブの需要ボリュームも大きくなります。
また、当社は米国のテキサス州ヒューストンに販売会社を持っていますが、今年の夏に現在の倍の広さを有する拠点に引越す予定です。
データセンター向けは、特に短納期対応が求められますので、戦略的な在庫の確保などによって、お客様の要求する納期に合わせられる体制を整えようとしています。
真のグローバル企業化に向けた海外M&A戦略



2025年度では、バルブ事業にて海外の売上高9%増を見込んでいます。トランプ政権による影響は懸念されますが、実際のところはいかがでしょうか。
河野氏:米国に関して投資家が気にされているのは関税だと思いますが、当社は中国、タイ、ヨーロッパなどさまざまな地域に工場があり、幸いにして中国から米国へ輸出しているウェイトは非常に低いです。
そのため、米中間の関税問題によるマイナスへの影響は少ないと考えています。
また米国の環境に対する動きが逆転し始めていることにより、当社の得意なカーボン分野の需要が増える見込みがあります。
一方、LNGでも実績がありますので、大手企業での保守・メンテナンス需要が発生することでバルブの発注が増えると、石油化学市場と脱カーボン市場の両方での需要が増えるのではないかと考えています。
先ほどのデータセンターの件も含めて、北米市場は伸びしろがあるため、この3年間は北米を最重点エリアに位置づけて各施策に取り組んでいく予定です。



米国は貴社のグローバル戦略においても、非常に重要なカギを握る拠点ですね。
他の地域の成長戦略はどのようにお考えですか。


まず、私の印象では中国の景気はそう簡単に戻って来るとは思えません。
では、中国で減少した需要をどこで埋めるのか。
私たちはインドだと考えています。
インドでは2015年に工業用バルブメーカーのマイクロニューマティックス社を買収 しており、すでにインド市場に風穴を開けています。
インドではケミカルや医薬分野を狙っていこうと考えていますので、今後もこの分野に強い企業を買収しながら、インドでのグループ機能を拡大していく予定です。
もうひとつ、中東についても成長戦略があります。
私たちは1980年代から中東向けにバルブを輸出していますが、ドバイに駐在事務所はあるものの、中東には現地法人がないのです。
そこで、サウジアラビアや周辺国などで拠点を作ることを検討しています。



インドなどの企業を日本企業がM&Aして経営をするというのは、かなり難しいとよく聞きます。
どのようにして御社のカルチャーとマッチさせながら成果を上げていくのでしょうか。
私たちが海外のメーカーをM&Aする際の基本方針は、買収した会社の経営者も一緒に経営を進めてくれるかどうかです。
彼らの経営方針と私たちの方向性が一致しているからこそ、グループに入ってくれると考えています。
そのため、ただ買収する・されるの関係性にとどまらず、一緒に経営を進めています。
インドでも、今のところは労働争議や経営者が突然去るといった大きなトラブルはありません。
さらなる株主還元の充実に向けて



御社の株主還元について、配当や自社株買い、優待の内容を詳しく教えていただけますか。


河野氏:現在、配当性向35%前後ですので、将来的には、もう一段階引き上げることも考えたいです。
ただし配当性向を上げるには、この2025年~2027年度の売上と営業利益をどこまで伸ばせるかが非常に重要です。
また私は、投資による企業成長によって利益がしっかりと還元される形が理想だと考えています。
そのため、単に自社株買いを行うだけでなく、成長投資も積極的に推進していく予定です。
自社株買いについては、手元資金と投資状況を慎重に見極めながら、適切なタイミングで実施する方針です。



最後に、個人投資家に向けてメッセージをお願いします。
当社のバルブ事業は馴染みのあるものではないかもしれませんが、どの時代にも流体は存在し、バルブはその流体を制御するのに必要なものです。
当社はこのインフラをしっかり支えるメーカーとして長期的に成長していきますので、ぜひ注目していただきたいと考えています。
今後も適宜事業ポートフォリオを変えながら、収益性を上げ、株主の皆様へしっかりと還元していきたいと考えていますので、ぜひご支援ください。



須﨑さんも今後どのようなことに挑戦していきたいかをお聞かせください。
須﨑氏:私の人生のテーマはずっと「挑戦」です。


引き続きロサンゼルスオリンピックまでの3年間、さらなる高みを目指すキッツとともに、ずっと挑戦し続けて、オリンピックチャンピオンを奪還したいです。
またさらにその4年後のオリンピックでも2連覇をして、夢を叶えたいと思います。
たけぞうの感想~インタビューを終えて~


キッツの河野社長にインタビューをさせて頂きました。
今後もデータセンターの新設需要が拡大するとの見通しで、同社にも恩恵があるとのお話がありました。
このインタビューを通じて、同社がデータセンターや半導体といった注目市場と密接に関わっていることを知り、「バルブメーカー」のイメージが大きく変わりました。
今後はインドや中東を足掛かりにさらなるグローバル市場への進出を考えておられるとのことで、世界での活躍を期待しています。
また、レスリングの須﨑選手のオリンピック金メダルも期待しています。
4/12 (土) 開催のブリッジサロンに株式会社キッツが登壇予定!
今回ご紹介した株式会社キッツが個人投資家向けIRセミナー「ブリッジサロン」に登壇します。
東京・大手町のKDDIホールにて直接ご来場いただけるほか、ライブ配信も行いますので、全国どこからでもご参加いただけます。
日時 | 2025年04月12日(土) |
参加費 | 無料 |
場所 | KDDI大手町ビル2階/ライブ配信 |
スケジュール | 詳細はコチラ |
企業担当者へ直接質問できる貴重な機会ですので、同社への理解を深めたい方、事業内容や成長戦略について詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。
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