川崎汽船の株価は危ない?
今後はどうなる?
海運大手の川崎汽船株はここ数年で一気に株価が上がったので、購入を考えている方も多くいるでしょう。
でも、ネット上だと「川崎汽船株は上がらない」「危ない」といった意見もあって不安…。
そこで今回は、株価が上がった背景から、川崎汽船株が危ないと言われる理由や将来性を分かりやすく解説します。
結論から申し上げますと、川崎汽船の株を買うのは長期目線ではおすすめできません。
かぶリッジの結論
- 海運バブルの終焉により、売上が下がることが見込まれる
- 同業他社とは異なる成長戦略に不安感がある
- 市場全体に頭打ち感があり株価の下落と減配続きが予想される
執筆:かぶリッジ編集部
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【株価暴騰】海運バブルが起こった要因
そもそもなぜ海運バブルが起こったのだろう?
海運バブルが起こったのは、以下のような複数要因が重なったためと考えられます。
コロナ特需
2020年11月以降、港湾混雑とコンテナ船の沖待ちにより輸送遅延の状態が続き、コンテナ不足やスペース不足になりました。
それに伴い、コンテナ船の運賃が急激に上昇し、株価にも影響しました。
実際に川崎汽船の株価がコロナ前後でどのように変化したのか見てみましょう。
リーマンショック後からコロナ前まで株価が低迷していましたが、コロナ特需により株価が急激な上昇を見せています。
海運業の株価は世界的に大きなニュースがないと低迷するため、コロナウイルスまん延は海運業の株価上昇にとって良いチャンスでした。
ロシア・ウクライナ問題
また、ロシア・ウクライナ問題によりコンテナ船の航路迂回や航海日数の増加でコンテナ船の需要が高まり、荷動き量に影響を与えました。
荷動き量は海運株価とほぼ連動した動きをするため、ロシア・ウクライナ問題は株価上昇を促しました。
また、ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰もコンテナ船の運賃急騰につながりました。
ウクライナ侵攻中は黒海が事実上閉鎖されたよ。
港湾ストライキ
2024年10月には、米東海岸とメキシコ湾岸で国際港湾労働者協会(ILA)によるストライキが1977年ぶりに起こりました。
これによりコンテナ船等の運賃市況が上昇していましたが、スト終了により海運株急落の一因となりました。
北米東岸だけでなく、北欧州や地中海の定期船運賃も打撃を受けており、コンテナ船は世界情勢の影響を受けやすいのです。
これらを踏まえて、海運バブルの終焉を考察してみたよ👇
川崎汽船の株価が危ないと言われる理由3つ
川崎汽船の株価が「危ない、上がらない」と言われる背景には、いくつかの理由があります。
大きく以下の3つに分けて、考察していきましょう。
コロナ収束により海運バブルが終焉
川崎汽船の株価が危ないと言われる理由の1つ目として、コロナ収束により海運バブルが終焉を迎えていることが挙げられます。
特に、コロナ特需であったコンテナ船のバブルが終わったことが要因です。
定期船運賃市況(SCFI)のグラフを同社が提示しています。
グラフからわかるように、コロナがまん延し始めた2021年4月から急激に運賃が上がってることがわかります。
また、2022年8月から急落しています。
コロナ禍では航空機輸送の代わりに船での輸送が多くなったよ!
海運業の株価はコンテナ船の運賃に連動することが多いことから、コロナ前後の株価も比較してみます。
2022年のコンテナ船の運賃に連動して株価はやや下がりましたが、すぐに上昇しました。
株価の急激な上昇が見られるね!
しかし、2022年より世界のコンテナ荷動き量は減少しているため、同社は今後業績が低迷することが予想されます。
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減配の可能性
川崎汽船の株価が危ないと言われる理由の2つ目は、減配の可能性があるということです。
コンテナ船のバブル崩壊により、業績が低迷することが予想されます。
以下に、直近10年の配当額と配当利回りをまとめてみました。
年度 | 年間配当額 | 配当利回り |
---|---|---|
2016年3月期 | 5円 | 2.29% |
2017年3月期 | 0円 | 0% |
2018年3月期 | 0円 | 0% |
2019年3月期 | 0円 | 0% |
2020年3月期 | 0円 | 0% |
2021年3月期 | 0円 | 0% |
2022年3月期 | 600円 | 7.48% |
2023年3月期 | 600円 | 19.83% |
2024年3月期 | 250円 | 4.12% |
2025年3月期(予想) | 100円 | 4.58% |
配当額の上下が激しいね。
2023年3月期と比較すると、2024年は350円の減配となっています。
また、コロナ前の2021年までは業績の低迷により長らく無配が続いていました。
11月には2024年度第2四半期決算が発表され、2025年3月期の年間配当予想を従来予想より15円増やした1株100円とする旨も発表されました。
また、900億円を上限とする自社株買いも実施することを発表。
中東情勢の緊迫長期化に伴うコンテナ船運賃の高止まりで業績見通しを引き上げていますが、今後もコロナ前のように業績が低迷する可能性も十分考えられます。
そのため、減配の可能性は引き続き高いと言えるでしょう。
成長戦略「海運一本足打法」に不安感
川崎汽船の株価が危ないと言われる理由の3つ目は、成長戦略「海運一本足打法」に不安感があるということです。
ここ数年では、同業他社である日本郵船や商船三井はポストコロナバブルとして新サービスや他事業に力を入れています。
例えば日本郵船は、物流分野での1,400億円規模のM&A計画を打ち出し、2026年度までに1.2兆円規模の投資計画を盛り込んでいます。
また、商船三井は不動産やフェリー、クルーズといった非海運事業に2,750億円の投資を振り分けると発表しました。
非海運事業に投資することで、リスクを分散させて収益の維持を狙うワン!
同業他社のこのような動きに対して、同社は「海運一本足打法」を掲げ、海運事業の自動車・鉄鋼原料・液化天然ガス輸送に経営資源の8割を集中させる姿勢を見せています。
海運一本足打法は、「脱炭素リスク」、「市況リスク」、「大量供給リスク」などのリスクを伴うため、安定的な収益獲得からは遠ざかってしまいます。
このような点から、川崎汽船への投資は同業他社に比べて危ないと言えます。
川崎汽船の基本情報
ここでは、川崎汽船の基本情報についてまとめます。
以下の4つの情報を詳しく見ていきましょう。
事業内容
川崎汽船は主に以下の4つの事業を展開しています。
- 定期船事業
原材料輸送や自動車、燃料輸送など - 物流事業
航空・海上貨物フォワーディング、陸上輸送、倉庫事業など - 燃料事業
燃料輸送の知見をもとにバイオ燃料の供給 - ターミナル事業
海陸の接点となるコンテナターミナルを国内外で運営
定期船事業を中心に、そのノウハウを活かして物流事業や燃料事業などに事業を拡大しています。
2024年3月期通期売上高の57%は製品物流が占めています。
このことからも、川崎汽船が物流事業に力を入れていることがわかります。
業績
まず、直近5年の業績推移を見てみましょう。
2021年~2023年の業績は全体的に上がっていたね!
具体的な数値は以下のようになっています。
年度 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|
2025年3月期(上期) | 5,380 | 611 | 1,832 |
2024年3月期 | 9,623 | 847 | 1,047 |
2023年3月期 | 9,426 | 788 | 6,949 |
2022年3月期 | 7,569 | 176 | 6,424 |
2021年3月期 | 6,254 | -212 | 1,086 |
2020年3月期 | 7,352 | 684 | 52 |
2024年3月期は、売上高9,623億円(前年同期比2.0%増)、営業利益847億円(前年同期比7.4%増)、当期純利益1,047億円(前年同期比85.0%減)となりました。
売上高や営業利益は増加しているものの、その伸び率は年々小さくなっています。
ただし、2025年3月期の予想は営業利益1,060億円、当期純利益2,350億円と回復見込みです。
2017年には、川崎汽船・日本郵船・商船三井が共同でコンテナ海運会社「Ocean Network Express(ONE)」を設立しています。
出資比率は、川崎汽船31%、商船三井31%、日本郵船38%だよ。
ONEのコンテナ船事業での短期運賃の上昇により、経常利益・中間純利益は増加していますが、長期的には市況に左右されるため堅調な推移になりづらいと考えられます。
川崎汽船の強みと弱みとは?
海運大手の競合企業(日本郵船・商船三井)と比較してみましょう。
決算期(2024年3月期) | 川崎汽船 | 日本郵船 | 商船三井 |
---|---|---|---|
売上高 | 9,623億円 | 2兆3,872億円 | 1兆6,279億円 |
営業利益 | 847億円 | 1,746億円 | 1,031億円 |
当期純利益 | 1,047億円 | 2,286億円 | 2,616億円 |
ROE | 6.74% | 8.91% | 12.23% |
EPS | 169.74円 | 553.61円 | 593.36円 |
PBR | 1.11倍 | 0.83倍 | 0.76倍 |
配当利回り | 3.39% | 3.35% | 3.64% |
強み:配当利回り3.39%とやや高い
表を見ると、配当利回りが3.39%と日本郵船に比べて高いことがわかります。
売上高や営業利益は他社と比較すると劣りますが、高配当株であると言えるでしょう。
他業界と比べると高配当株ではありますが、前述したように今後減配の可能性もあるので、買いの判断には注意が必要です。
弱み:PBR1.11倍と割高
PBRは1.11倍と、競合2社に比べ割高になっています。
一般的にROEが高い企業はPBRも高い傾向にありますが、他社と比較するとROEは低水準。
今後は他社同様、PBR1倍割れになる可能性もあるかもしれません。
【まとめ】川崎汽船株は危ない!判断は慎重に
川崎汽船の今後はどうなっていくのかな?
最後に川崎汽船株に投資する際の重要なポイントをまとめます。
結論、川崎汽船の株は危ないため、長期投資という点ではおすすめできません。
かぶリッジのまとめ
- 海運バブルが終焉を迎えているため、株価の下落が考えられる
- 競合他社と異なる成長戦略に不安感
- 今後も減配の可能性がある
川崎汽船株を今後購入しようと考えている方は、減配のリスクを考慮しなければなりません。
ただ、中東情勢・米東海岸での港湾ストライキが再度起こるなど市況に変化が出たときは運賃が上がりやすく、株価も急上昇する可能性があります。
また、海運業は原油価格の変動で赤字になる可能性もあるため、その点も考慮しなければいけません。
株価が下がってきたタイミングで、約20年に一度起こると言われている海運ブームのために買っておくのも一つの手だワン!