・東京電力の株価があがったのはどうしてかな?
・原発は今後どうなっていくのかな?
このようなお悩みを解決します。
かぶリッジの結論
- エネルギー価格の上昇や政府の脱炭素政策、経営再建によって株価の上昇が期待できる
- 市場シェアや先進的な取り組みが他社と比較した際の大きな強み
- 福島第一原発事故による信頼回復という課題を抱える中、経営再建や信頼獲得に向けた取り組みが進む
東京電力ホールディングス(以下、東京電力)の株価が上昇傾向にあることをご存じでしょうか。
2011年以降低迷していた株価は、2021年頃から徐々に回復の兆しを見せています。
本記事では、東京電力の株価が上昇した理由を3つ挙げ、他社との比較を交えながら将来性を分析します。
インフラ系企業は株価が安定しているイメージがあり、購入を検討している方も多いと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
執筆:かぶリッジ編集部
かぶリッジは、20年以上にわたり投資家向けサービスを提供する株式会社インベストメントブリッジが運営しています。日本株投資や米国株投資を実践する編集部メンバーや、現役の証券アナリスト、元証券会社勤務の社員等で運営しています。
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東京電力の株はなぜ上がる?理由3つを解説
💡このパートの要約
- エネルギー価格の上昇により、東京電力の業績は回復傾向
- 政府の脱炭素政策に積極的に対応するため、再生可能エネルギー事業を拡大
- 東京電力の経営再建案の進捗はあまり順調でない
まずは最近の東京電力の株価の推移を見てみましょう。
今は少し落ち込んでいるけど、ここ数年は上昇傾向になっていることが読み取れるね!
東京電力の株価上昇には、主に以下の3つの理由が考えられます。
それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
理由①エネルギー価格の上昇
近年エネルギー価格は上昇しており、これは東京電力の収益に直接的な影響を与えています。
原油や天然ガスの価格が上昇すると電力会社の燃料費が増加し、同時に電力販売価格も上昇する傾向にあるためです。
以下のグラフは、2011年以降の原油価格の変動を示したものです。
コロナによる需要減少で2020年に安価になったものの、その後は大きく回復を見せているね!
こうした値動きに伴い東京電力の利益率が改善し、株価にポジティブな影響を与えました。
近年の国際情勢の不安定化や需給バランスの変化を踏まえると、エネルギー価格は今後も上昇していくと予想されています。
特に、電気料金の値上がりの大きな要因となっている天然ガスの価格上昇は少なくとも2025年頃まで続く見通しです。
また、ウクライナ情勢の影響でガス田の開発が減少しており、天然ガスの供給量を増やすこともなかなか難しいと言われています。
世界的に脱炭素の流れが大きくなっていることも影響しているんだワン!
こうした点を鑑みると、2025年頃までは天然ガスが世界的にソールドアウト状態になると考えられます。
さらに、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は、天然ガス価格の上昇が2050年頃まで続くと予測しています。
加えて、石炭価格も上昇が続く見込みです。
日本の電源構成は、天然ガスと石炭による火力発電が7割以上を占めているから与える影響も大きそうだね!
天然ガスと石炭の値上がりは日本の電気料金に直結するため、東京電力のチャートにプラス要因を与えてくれるでしょう。
理由②政府の脱炭素政策
東京電力の株価上昇の理由2つ目は、政府の脱炭素政策です。
日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標を掲げており、東京電力はこの政策に積極的に対応するため、再生可能エネルギー事業の拡大を進めています。
具体的には、以下のような再生可能エネルギーの利用拡大や新たな発電技術の導入を目指す取り組みが挙げられます。
このロードマップをもとに、東京電力は「ゼロエミッション2050」を掲げ、2030年度までに販売電力由来のCO2排出量を2013年度比で50%削減し、2050年度までにはエネルギー供給由来のCO2排出を実質ゼロにすることを目指しています。
これらの新たなエネルギー事業への取り組みが、投資家からの好評価を得て、株価上昇の要因となっています。
理由③経営再建
東京電力の株価が上昇した理由3つ目は、経営の再建を行っていていて今後の伸びしろがあるということです。
2011年の福島第一原子力発電所事故以降、東京電力は厳しい経営状況に置かれていました。
福島第一原子力発電所事故の経過と教訓については東京電力から説明されているので参照してみて欲しいワン!
しかし、その後の経営再建努力とコスト削減施策により、徐々に業績を回復中です。
2024年3月期決算では、火力発電の燃料コストの低下などが影響し、前期比+7,109億円の増益を記録しました。
増益額がすごく大きいね!経営再建が進んでいる印象を受けるね!
ただし、今年度には経営再建案である「総合特別事業計画(総特)」の更新が予定されていますが、これまでの計画は未達が続いています。
以下の表は原賠機構の経営評価を参考に、東京電力再建の進捗状況をまとめた表です。
ここで特に焦点となるのは、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働についてです。
電気料金の東西格差や脱炭素電源の供給による経済成長機会の確保などの観点から、再稼働の重要性は高いものの、現状では地元の同意が得られていません。
そこで、東京電力は2026年度までに原子力部門の本社機能の一部を新潟に移転し、現場重視や地元密着の姿勢をアピールしています。
これにより再稼働への理解を得ようとしているんだワン!
低コストで発電ができる原発の再稼働が実現すれば、業績にはポジティブな影響があるでしょう。
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東京電力の事業内容・業績
💡このパートの要約
- 東京電力はホールディングス制で、電力関連の5つの事業を展開
- 2024年3月期は、火力発電の燃料の調達コストの低下により黒字化
東京電力はホールディングス制を採用しており、電力を中心とした関連事業を展開しています。
事業内容
東京電力グループは、以下の図のように持株会社である東京電力ホールディングスと、4つの事業会社に分かれています。
そして各会社において、以下の5つの事業を展開しています。
- ホールディングス
各事業会社のサポートや原子力発電所の運営を行っており、東京電力HDの持株会社です。 - フュエル&パワー
火力発電の運営や燃料事業への投資を行っています。 - パワーグリッド
送電・変電・配電に関する事業や、土地・建物の管理を行っています。縁の下の力持ちと言える事業です。 - エナジーパートナー
小売り電気事業を担っています。我々の生活に一番近い存在と言えるでしょう。 - リニューアブルパワー
再生可能エネルギー発電関連の事業を行っています。今後伸びることが期待される事業です。
業績
業績はどうだったのかな?
2024年3月期は、売上高6兆9,183億円(前期比 -14.7%)、当期純利益2,678億円(前期1,236億円損失)となりました。
増益の主な要因は、火力発電の燃料の調達コストが下がったことです。
このように今期は黒字となりましたが、以下の2つの点には注意が必要です。
- 原発事故の処理・賠償費用の多額の負担がある。
- 国や機構からの借入を、特別利益として計上している。
電力・ガス業界の大手4社を比較!東京電力の強みと弱みは?
💡このパートの要約
- 首都圏を中心とした圧倒的な市場シェアが安定した収益基盤となる
- 再生可能エネルギーや新技術の導入に積極的で、先進的な取り組みを行っている
- 福島第一原発事故による信頼低下の回復は、いまだ課題となっている
続いて、東京電力と他の電力・ガス大手3社(関西電力、東京ガス、大阪ガス)を比較し、東京電力の強みと弱みを分析します。
企業名 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 時価総額(億円) |
---|---|---|---|
東京電力 | 69,183 | 2,788 | 8,017 |
関西電力 | 40,593 | 7,289 | 19,229 |
東京ガス | 26,645 | 2,203 | 17,531 |
大阪ガス | 20,830 | 1,725 | 13,008 |
売上高は圧倒的に高いけど、営業利益や時価総額は他社と比較しても低いみたいだね…
ここからは、同業他社と比較した東京電力の強みと弱みについてご紹介していきます。
強み①市場シェア
東京電力の最大の強みは、首都圏を中心とした巨大な顧客基盤です。
関東地方の電力需要の大部分を占めており、この圧倒的な市場シェアが安定した収益基盤となっています。
以下のチャートは電力会社の全国における販売量ランキング(2024年6月における実績値)です。
全国で見ても東京電力のシェアは圧倒的なんだね!
また、以下の表は東京電力の受持区域を示したものです。
同社受持区域 | 全国 (電力10社計) | 同社受持区域 / 全国 | |
---|---|---|---|
面積(km2) | 39,576 | 377,972 | 10.5% |
人口(万人) | 4,484 | 12,708 | 35.3% |
人口密度(人/km2) | 1,133.0 | 336.2 | 337.0% |
契約口数(万口) | 2,923 | 8,513 (注2) | - |
販売電力量(億kWh) | 2,570 | 8,230 | 31.2% |
最大電力(万kW) | 4,980 [2014.8.5] (注1) | 15,274 [2014.7.25] | 32.6% |
資本金(億円) | 14,009 | 33,804 | 41.4% |
総資産(億円) | 137,276 | 417,529 | 32.9% |
総収入(億円) | 66,774 | 196,033 | 34.1% |
(注1)同社最大は、6,430万kW(2001年7月24日)。
(注2)電力10社の契約口数は、特定規模需要を含まない需給契約ベースの数値。
東京電力が占める割合が全国的に高いことが分かるね!
こうした市場シェアの大きさは、他社と比較した際の東京電力の強みだと言えるでしょう。
強み②先進的な取り組み
再生可能エネルギーや新技術の導入に積極的で、先進的な取り組みを行っている点も東京電力の強みです。
特に、以下の分野で業界をリードしています。
大規模洋上風力発電の開発
東京電力の事業会社である東京電力リニューアブルパワーでは、千葉県銚子沖で国内初の着床式洋上風力発電の実証試験を実施しています。
2030年までに浮体式洋上風力を国際競争力のあるコスト水準で商用化する技術を確立することを目標に、実験が進行中です。
日本は四方を海に囲まれているため、洋上風力発電のポテンシャルが高いと言われています。
一般的に洋上は陸上に比べて風況がよく、陸上よりも大きな風車を建設しやすいなど、日本と相性がいい発電方法です。
政府からも、2040年までに3,000万~4,500万キロワットの洋上風力発電の導入を目標に打ち出されました。
3,000万キロワットの電気があれば、一般家庭約18,000世帯分以上の電力を賄える量になるんだワン!
エネルギー自給率の向上や地球温暖化防止の観点からも期待がかかる風力発電に先進的に取り組んでいるという点は強みと言えます。
VPPの構築
東京電力はVPPの構築にも力をいれており、これも先進的な取組としての強みであると言えます。
バーチャルパワープラント(VPP)とは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供することです。
ん~、むずかしくてよく分からないな…。実際の例を見たら理解できるかな?!
簡単にいえば、各地にあるソーラーパネルなどの小規模な電力源を統合して制御することで、地域全体をあたかも一つの発電所のように見立てています。
以下は東京電力が手掛けるVPP事業のスキーム図です。
発電して余った電気は足りないところに回すなど、仮想の発電所が効率的に電力を分配しているね!
2050年ゼロエミッション東京の実現に向けて、再生可能エネルギー設置場所に限りがあるという課題を解決する都庁版VPPを構築しようとしているのです。
弱み①信頼回復への課題
これまでは東京電力の強みについて紹介してきましたが、ここからは同業他社と比較した弱みを紹介します。
東京電力最大の弱みは、福島第一原発事故による信頼低下です。
福島第一原発事故後の事業リスクや債務負担、将来的な収益力に対する懸念が続いているため投資家からの評価が相対的に低いと言われています。
事故の後処理や賠償費用が経営を圧迫し続けており、完全な信頼回復にはまだ時間がかかりそうです。
また、電力自由化に伴う新規参入者との競争激化も、東京電力にとっては課題となっています。
東京電力は信頼回復に向けての経営方針文書を発表するなど、信頼回復に努めています。
以下は東京電力が公表している信頼回復のための「4つの約束」です。
- 情報公開と透明性の確保
- 業務の的確な遂行に向けた環境整備
- 原子力部門の社内監査の強化と企業風土の改革
- 企業倫理の徹底
また、IAEA(国際原子力機関)の視察や事故収束作業への専門家の迎え入れなど、安全性の元廃炉に向けて取り組みを進めています。
原子力発電所の運営やリスク管理に対しても、世界でも高いレベルの人材が監視・助言を行うようにするなど信頼回復に努めています。
このように情報公開の強化や企業風土の改革などが進められていますが、信頼回復は依然として克服すべき課題です。
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東京電力の株価や配当はどうなる?将来性をもとに買い時か分析
💡このパートの要約
- 株価は最近下落基調にあるものの、2020年ごろと比較すると上昇している。
- 再生可能エネルギー事業への注力でさらなる拡大を目指している。
- 配当の復活については現時点で見通しが立っていない。
ここからは、これまでの東京電力の株価や配当の推移を紹介していきます。
株価の推移
過去5年間の東京電力の株価推移を見ると、次のような傾向が見られます。
- 2019年〜2020年:新型コロナウイルスの影響で下落
- 2021年〜2022年:エネルギー価格上昇に伴い上昇傾向
- 2023年〜現在:脱炭素化への期待から更なる上昇
ここ最近は下落基調だけど、それでも2020年ごろと比較すると上昇しているね!
エネルギー事業の将来性
東京電力の将来性を考える上で、以下の点に注目が集まっています。
- 再生可能エネルギー事業の拡大
→2030年までに国内外で700万kW規模の再エネ開発を目指す
- デジタル技術を活用した新サービスの展開
→エネルギーマネジメントサービスの拡充
- 海外事業の強化
→アジア地域を中心とした電力インフラ事業の展開
これらの成長戦略が成功すれば、中長期的な株価上昇が期待できます。
配当方針
続いて東京電力の配当金の推移を見ていきましょう。
東京電力は2010年期末配当金を最後に無配が続いており、現在も配当を再開していません。
これは、2011年の福島第一原子力発電所事故の影響による多額の賠償費用や復旧費用が、会社の財務負担となっているためです。
今後、原子力発電所の再稼働が進み、経営状況が安定した場合には、将来的に配当再開の可能性も考えられますが、現時点では配当復活の見通しは立っていません。
今後も配当金はどうなるか未知数だから、東京電力株を検討する時は配当金ではなく、株価上昇や事業成長を中心に期待する必要があるね、、、
【まとめ】東京電力の株価が上がる理由
東京電力の株価が上昇した理由や業績、将来性について解説してきました。
ここで、大事なポイントを3つにまとめます。
かぶリッジのまとめ
- エネルギー価格の上昇や政府の脱炭素政策、経営再建によって株価の上昇が期待できる
- 市場シェアや先進的な取り組みが他社と比較した際の大きな強み
- 福島第一原発事故による信頼回復という課題を抱える中、経営再建や信頼獲得に向けた取り組みが進む
再生可能エネルギー事業の拡大や新技術の導入など、将来の成長への期待も株価を押し上げる要因です。
ただし、福島第一原発事故の影響や電力自由化による競争激化など、リスク要因も存在しています。
また、東京電力の株価は、エネルギー政策や国際情勢の影響を受けやすいため、今後も注視が必要です。
中長期的な視点で見れば、脱炭素化の流れに乗った事業転換が成功すれば、更なる株価上昇の可能性も考えられます。
投資を検討する際は、これらの要因を総合的に判断し、自己責任で意思決定を行うことが重要だワン!